研究課題/領域番号 |
25248021
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
菊池 裕嗣 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (50186201)
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研究分担者 |
樋口 博紀 九州大学, 先導物質化学研究所, 助教 (50432951)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 液晶 / ソフトマター / 感受率 / ブルー相 / 電気光学効果 |
研究概要 |
本研究は、研究代表者らが開発した高分子安定化ブルー相のさらなる性能向上を推し進めるとともに、新しい原理に基づく巨大感受率材料の創出と実用化を目指す。高分子安定化ブルー相は、液晶分子、キラル剤、モノマー、光重合開始剤の混合溶液(Precursor)がブルー相となるよう温度を正確に制御し、UV光を照射することによってモノマーをブルー相中でin-situ重合することで調製される。今年度は液晶分子の化学構造とねじれを誘起させるキラルドーパントの分子構造を種々変化させ、分子と構造とねじれの関係について着目した。 極性基としてフッ素原子を有する分子は、高い誘電異方性を有しながらも極性不純物を取り込みにくいことからデバイス材料として有用である。分子配列にねじれを誘起する力 (HTP) が大きい誘導体が報告されているビナフチル骨格を主骨格とした新規含フッ素ビナフチル系キラル剤を含む種々のビナフチル系キラル剤を合成し、それらの液晶中での置換基や構造の違いによる特性の変化について検討を行った。ビナフチル系キラル剤の閉環体と開環体を比較したところ、閉環体は大きなHTPの絶対値を示しその温度依存性は小さく、開環体の場合は逆になった。その理由として、ビナフチル誘導体は二つのナフタレン環の成す二面角によりHTPの大きさが変わるため、閉環体においては縮環することで分子構造が剛直になり、二面角が大きなHTPを示す角度に固定されたからだと考えられる。反対に開環体では、二つのナフタレン環の結合軸周りの自由回転が許容されているため、HTPが小さい又は逆向きのらせんを誘起するようなコンフォメーションをとりやすくなっており、誘起するHTPが小さくなったと考察される。また、母液晶に対する各キラル剤の相溶性を調べたところ、フッ素を有するビナフチル系キラル剤が最も良好な溶解性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で合成したフッ素ビナフチル系キラル分子は新規化合物であり、さらにキラル液晶を誘起させるためのキラル剤として優れた性能(液晶分子に対する高い配向ねじり力と母液晶への高い相溶性)を示すことが明らかとなり、当初の目的であった分子と構造とねじれの関係について有用な知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後も当初の計画に従い、 分子化学構造とブルー相発現の相関、ブルー相の安定化に寄与する材料因子、Kerr係数の大きさを決める材料因子、ブルー相の高分子安定化メカニズム、巨大Kerr効果を生み出すための新規メカニズム創出、 について研究を推進して行く予定である。 研究遂行上問題は生じていない。
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