研究課題
小さなインプットで大きなアウトプットを示す材料の開発は、将来の省エネルギー社会、高度情報化社会を支える基盤的技術として重要な意義をもつ。研究代表者らは、分子の自己組織や協同運動の科学に基づき、巨大感受率を示すソフトマター材料の開発を推進している。これまで、高分子安定化ブルー相と呼ばれる液晶系ソフトマターにおいて最高クラスの電気光学応答(Kerr効果)を広い温度範囲にわたり発現させることに成功している。本研究の目的は、高分子安定化ブルー相のさらなる性能向上を推し進めるとともに、これまでと異なる切り口・新しい原理に基づく巨大感受率材料の創出と実用化を目指す。本年度は、高分子安定化ブルー相のKerr効果を向上させる目的で、母液晶の誘電異方性に着目した。液晶の誘電異方性は電場による液晶回転のトルクやフレデリクス転移の閾値電圧を決める重要なパラメータである。本研究では液晶骨格にジオキサン環を有するある液晶化合物において極めて大きな誘電異方性が発現されることを見出した。通常の液晶では誘電異方性の絶対値は0~20程度で、50を超えることは希である。しかしながら新たに見出されたジオキサン系液晶の誘電異方性は10000を超える異常な値を示す。分子骨格から計算される双極子モーメントは一般的な液晶であるシアノビフェニル系の2倍程度有るので、この異常な誘電異方性の大きさは、分子の組織構造に由来すると予想した。そこで、三角波電場印加に伴う分極挙動を測定したところ、大きな誘電異方性を示す温度領域で強誘電的な挙動を示すとともに、その分極の大きさは無機強誘電体にも匹敵する大きさであった。さらに、第二高調波発生(SHG)測定を行ったところ、大きな誘電異方性を示す温度領域で明確なSHG信号が確認できた。以上より、これまで例のない高応答性の液晶の発見とメカニズム解明に成功した。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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