研究課題/領域番号 |
25248032
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
末永 智一 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 教授 (70173797)
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研究分担者 |
伊野 浩介 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (00509739)
高橋 康史 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 助教 (90624841)
RAMON Javier 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 助教 (50613270)
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研究期間 (年度) |
2013-05-31 – 2016-03-31
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キーワード | 電気化学イメージング / バイオ分析 / バイオMEMS / 生体分子 / マイクロ・ナノ化学 / 細胞機能解析 / 微小電極アレイ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、生体組織の網羅的イメージングを可能とする電気化学デバイスの開発と、開発したデバイスを用いた生体組織の解析である。これまでに申請者が独自に開発した集積化回路をベースにデバイス(バイオLSI)と局所レドックスサイクルをベースにしたデバイス(LRC-ECデバイス)の改良を行い、生体組織の革新的バイオイメージング法を提案する。 まず始めにバイオLSIデバイスの改良を行った。電極表面を高分子で修飾することにより、高感度な酵素活性評価を実現した。また、測定プログラムやデバイス回路の改良により、電流計測モード以外の計測モードを追加することに成功した。また、開発したバイオLSIデバイスを用いて、3次元培養した胚性幹細胞(ES細胞)の分化状態を評価した。さらに、細胞が持つ酵素活性をリアルタイムに計測することに成功し、開発したデバイスの細胞機能解析への応用を示した。このようなリアルタイムかつ広範囲の電気化学イメージングによるES細胞の評価はこれまでに報告されておらず、本研究の学術的な意義は大きい。また、脳スライスから放出される物質のイメージングに成功しており、現在、放出物質の解析を行っている。 この他に、LRC-ECデバイスの改良を行った。センサの高密度化に向けたデバイス構造を考案し、現在デバイスを作製中である。また、EBの分化評価への応用を検討し、酵素活性を介した分化評価に成功した。 バイオLSIデバイスとLRC-ECデバイスの開発に加え、多機能電気化学顕微鏡の開発を行い、本研究で開発した電気化学デバイスとの比較を行った。多機能電気化学顕微鏡は、世界でトップレベルの解像度を示す一方で、本研究で開発した電気化学デバイスは、操作性やイメージングの時間分解能では優れていることを示した。また、バイオサンプルを作製するための誘電泳動デバイス・システムを開発し、ハイドロゲルを組み合わせた培養組織の作製に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していた研究以外にも成果が出ており、トップジャーナルでの報告が行われた。 また、Electrochemistry誌に掲載されたLRC-ECデバイスに関する論文(81巻9号、682-687、2013)は、Electrochemistry誌の論文賞を受賞した。したがって、平成25年度に行われた研究は、国内的にも国際的にも評価が高いと言える。以上の点から、当初の計画以上に研究成果を出ていると言える。 バイオLSIデバイス関して、電流計測と電位計測の同時計測が可能なデバイスを開発しており、平成26年度以降の新たなバイオイメージングが期待できる。これにより、これまで行うことが難しかったようなバイオアッセイ・バイオイメージングが可能になり、本研究で提案するような革新的なバイオイメージングが期待できる。バイオLSIデバイスは、材料評価などの様々な応用・展開に成功しており、その点で、当初の計画以上に発展していると言える。 当初予定していた研究以外の成果として、ハイドロゲルの電解析出法が挙げられる。この研究では、電極上に生体分子を包埋できるハイドロゲルを配置させることに成功し、細胞アレイの作製に成功した。これにより、革新的なバイオアッセイへの応用が強く期待できる。また、誘電泳動現象を用いた細胞ペアの形成に成功しており、今後の細胞解析への応用がますます期待できる。 平成25年度は、遺伝子評価を含めた細胞解析に関する知見を獲得しており、デバイス開発という観点だけでなくバイオテクノロジーの観点においても大きな成果を上げることに成功した。 このように平成25年度は、革新的なバイオイメージングに向けたデバイス開発や要素技術の開発に成功した。したがって、当初予定していたよりも研究が進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度では当初予定していた以上の研究成果が出ており、平成26年度は引き続き、バイオLSIとLRC-ECデバイスの開発を行う。 平成25年度はバイオLSIデバイスの改良を行い、電流計測モード以外の計測モードを追加することに成功した。平成26年度は、バイオLSIデバイスの基礎的な評価に加え、これらの計測モードを用いた新規バイオイメージング法を提案し、革新的な電気化学バイオイメージングとして完成させる。また、平成25年度で計測に成功したES細胞以外の細胞種を評価することで、バイオLSIデバイスの新しい応用を示す。具体的には、神経細胞から分泌される神経伝達物質の評価や間葉系幹細胞(MSC)の分化評価への応用を検討する。 LRC-ECデバイスに関して、センサの高密度化に向けた取り組みを行う。平成25年度では、デバイスデザインの考案を行ったため、平成26年度からはデバイス作製を実施する。また、センサを高密度化したLRC-ECデバイスを用いて、高解像度の電気化学バイオイメージングを実施する。 これまでに開発したデバイスを用いて、酵素活性評価を介したES細胞の分化評価に成功している。平成26年度はES細胞の遺伝子評価を行い、細胞分化における遺伝子と酵素活性の知見を獲得する。 平成25年度に引き続き、平成26年度も多機能電気化学顕微鏡や誘電泳動デバイス、ハイドロゲル電解析出法の開発を行う。これらの手法と、本研究で開発した手法を比較し、本研究で開発したシステムの有用性を示す。さらにシステム間の融合を行い、さらに多機能化した電気化学バイオイメージングデバイスを提案する。また、バイオサンプルの作製法に関しても引き続き行い、作製したバイオサンプルのバイオイメージングを行う。
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