研究課題
平成26年度は、まず始めにバイオLSIデバイスの作製法を検討した。これまではチップベースでデバイスを作製していたが、ウエハベースでデバイスを作製する手法を採用した。この結果、2~4倍以上のデバイス作製の効率化を達成した。次に、平成25年度で開発した電位計測モードの基礎的な評価を実施した。また、評価後に、この計測モードを用いたバイオイメージングを実施し、新しい細胞イメージング法としての提案に成功した。また、3次元的に培養した細胞からの神経伝達物質の電気化学イメージングに成功した。さらに、酵素活性を介した間葉系幹細胞(MSC)の分化評価に成功した。これらの成果に関する論文は、現在準備中である。バイオLSIデバイスのバイオ以外への展開を検討するために、材料評価を行った。具体的には、ポジティブフィード・ネガティブフィードモードと呼ばれる電気化学計測手法を用いて、材料基板の導電性やトポロジーを評価した。また、数値解析による測定手法の正当性を評価した。これにより、バイオLSIデバイスの新たな展開を示せた。LRC-ECデバイスに関して、センサを高密度化したデバイスの作製に成功した。申請者がこれまで報告しているデバイスに比べ、センサ密度を40倍以上に向上させることに成功した。また、このLRC-ECデバイスを用いて、高解像度の細胞の電気化学バイオイメージングを達成した。さらに、呼吸活性に向けた新たな計測システムを開発し、分子電気化学スイッチング素子と呼ばれる新しい概念を提案した。このシステムを用いることで、生物の基本的な活性である呼吸量の評価が可能になり、LRC-ECデバイスのさらなる展開が期待できる。平成26年度も引き続き、多機能電気化学顕微鏡や誘電泳動デバイス、ハイドロゲル電解析出法の開発を行った。現在、計測システムの融合を検討中である。
1: 当初の計画以上に進展している
平成26年度はデバイスの供給量を向上させることに成功した。これにより、共同研究先への迅速なデバイスの供給が可能になり、今後の研究を飛躍的な発展させることが期待できる。これにより、研究計画書で提案しているような内容を完遂・発展させることが可能であり、研究が順調に進展していると言える。平成26年度は、LRC-ECデバイスに関する2件の学術賞(電気化学会進歩賞(佐野賞)、分析化学会奨励賞)を受賞しており、本研究の学術的な評価が高いと言える。また、当初予定していた研究以外にも成果が出ており、トップジャーナルでの報告が行われた。これらのことから、学術的な点における研究の達成度として、当初予定したよりも進展していると考えられる。また、平成26年度は神経細胞やMSCといった様々な細胞への応用に成功しており、その点で大きな発展があった。これにより、溶存酸素の検出による呼吸量評価や細胞分泌物の電気化学計測、酵素活性を介した細胞機能評価といった研究計画書で提案した項目を達成している。また、平成25年度と同様に、平成26年度も遺伝子評価を含めた細胞解析に関する知見の獲得に成功しており、デバイス開発という観点だけでなくバイオロジーの観点においても大きな成果を上げている。これは、当初予想していた成果を超える知見であり、今後の再生医療や分子生物学への貢献が期待できる。このように本年度は、革新的なバイオイメージングに向けたデバイス開発や要素技術のさらなる進展があった。平成27年度に向けた研究体制、準備状況が整っており、その点においても、本研究が順調に進展していると言える。
平成26年度は当初予定していた以上の研究成果が出ているため、平成26年度も同様にバイオLSIとLRC-ECデバイスの開発を行い、研究計画書で提案している革新的バイオイメージングに向けた電気化学デバイスの開発を終える。平成26年度までにデバイスの基礎評価を終えているため、平成27年度は様々なバイサンプルの評価を行う。具体的には、iPS細胞やハイドロキシアパタイトなどに播種した幹細胞の評価を行う。骨分化、軟骨分化といった、これまで行われていないバイオサンプルの評価を検討することで、本研究で開発した電気化学イメージングデバイスの可能性を広げる。また、電流計測モード以外の計測モードとして開発した電位計測モードを用いて、細胞などのバイオサンプルのイメージングを行い、新しいバイオイメージング法を完成させる。さらに、開発した手法と既存の手法の差別化、融合を行い、さらに洗練したイメージング法として提案する。LRC-ECデバイスに関して、その応用の幅を広げるため、新しい計測システムを考案する。また、プローブ顕微鏡などと組み合わることで、細胞回収、遺伝子評価への検討を行い、革新的バイオイメージングとして完成させる。デバイス上の修飾法を検討し、デバイス応用の展開を検討する。具体的には、プリンタを用いた修飾法を検討する。タンパク質やDNAなどのバイオサンプルをセンサ上に固定化することで、開発したバイイメージングの応用の幅を広げる。また、細胞をプリントする手法による細胞アッセイを検討する。さらには、組織構築を開発した電気化学デバイス上で行い、電気化学をベースにした組織工学(Electrochemical Tissue Engineering: eTE)を提案する。これにより、本研究の新たな応用や展開を討検討する。これらの検討により、生体組織の革新的バイオイメージングに向けた電気化学デバイスの開発を終える。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (16件) (うち査読あり 16件、 謝辞記載あり 11件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (59件) (うち招待講演 7件)
Anal. Chem.
巻: 87 ページ: 3484-3489
10.1021/acs.analchem.5b00027
Anal. Sci.
巻: In press ページ: In press
In press
J. Electroanal. Chem.
巻: 741 ページ: 109-113
10.1016/j.jelechem.2015.01.020
Lab Chip
巻: 15 ページ: 848-56
10.1039/C4LC01099J
Nat. Commun.
巻: 5 ページ: 5450
10.1038/ncomms6450
Anal. Methods.
巻: 6 ページ: 6337-6642
10.1039/C4AY00791C
Anal Chem.
巻: 86 ページ: 4723-4728
10.1021/ac403394z
巻: 86 ページ: 4016-4023
10.1039/C4AN00510D
Electrochemistry
巻: 82 ページ: 331-334
10.5796/electrochemistry.82.331
巻: 14 ページ: 787-794
10.1039/c3lc51156a
巻: 30 ページ: 305-309
10.2116/analsci.30.305
巻: 14 ページ: 3690-3694
10.1039/c4lc00479e
Anal. Chim. Acta.
巻: 842 ページ: 20-26
10.1016/j.aca.2014.06.047
Analyst
巻: 139 ページ: 5001-5006
10.1039/c4an00510d
Biosens. Bioelectron.
巻: 59 ページ: 166-173
10.1016/j.bios.2014.03.031
Anal. Bioanal. Chem.
巻: 406 ページ: 275-282
10.1007/s00216-013-7430-z