研究課題/領域番号 |
25248033
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
北森 武彦 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60214821)
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研究分担者 |
嘉副 裕 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20600919)
馬渡 和真 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60415974)
清水 久史 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60631281)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 熱レンズ顕微鏡 / 拡張ナノ空間 / マイクロ・ナノ化学デバイス |
研究概要 |
本研究は、10-1000nmスケールの空間(拡張ナノ空間)中の非蛍光分子を波動光学原理を用いて検出するデバイスの開発を目的とする。研究代表者らはこれまでに、熱レンズ顕微鏡に微分干渉観察法の原理を導入することにより光の波長よりも小さい空間で非蛍光分子を高感度に測定可能な微分干渉熱レンズ顕微鏡(DIC-TLM)を開発してきた。本研究ではこれをデバイス化することを目指し、ガラス基板上にMach-Zehnder干渉計型の光導波路を作製し、一方の導波路に熱レンズ効果を発生させ、これを干渉によって検出するデバイスを開発する。 平成25年度は、デバイスの作製と原理検証に取り組んだ。フェムト秒レーザを用いて作製したMach-Zehnder干渉計型の光導波路を有するガラス基板と、UVフォトリソグラフィおよびプラズマエッチングを用いて作製したマイクロ流路(深さ5 m)を有するガラス基板を当研究室で独自に開発した低温接合法で接合することによりデバイスを作製した。光ファイバを用いて入口側からレーザ光(プローブ光)を導入したところ、出口側で導波したプローブ光を検出することに成功した。従って、低温で基板同士を接合することによって光導波路の機能を損なうことなくデバイスを作製することに初めて成功した。次に、マイクロ流路内に非蛍光色素水溶液を導入し、別のレーザ光(励起光)で加熱して熱レンズ効果の検出を試みた。その結果、励起光照射時のみプローブ光の強度変化(信号)が観察され、かつ信号は試料濃度に比例していた。この結果より、熱レンズ効果の検出というデバイスの原理検証に初めて成功した。 以上の結果は、光導波路および波動光学原理を用いて熱レンズ効果を検出した初めての成果である。DIC-TLMと同様に波動光学原理に基づいていることから、今後波長よりも小さい拡張ナノ空間での測定可能なデバイスが開発できると期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では光導波路の作製にイオン注入法を利用する予定であったが、光導波路のサイズ、位置制御が困難であることから、簡便に製作可能なフェムト秒レーザ法を用いて原理検証を実施した。しかしながら、今年度に予定していた低温接合によるデバイスの作製および原理検証の両方に成功していることから、進捗状況は予定通りと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は感度を向上するために導波路の位置およびサイズを制御することが課題となる。平成25年度に実施したフェムト秒レーザ加工法の他に、MEMS技術を利用した製作法なども検討し、比較しながら研究を推進していく。
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