研究課題/領域番号 |
25248035
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
沖野 晃俊 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (60262276)
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研究分担者 |
丸尾 昭二 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00314047)
梅村 知也 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (10312901)
千葉 光一 関西学院大学, 理工学部, 教授 (20281066)
稲垣 和三 国立研究開発法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (50356490)
宮下 振一 国立研究開発法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (60614766)
古田 直紀 中央大学, 理工学部, 教授 (90101055)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 細胞分析 / 大気圧プラズマ / 質量分析 / 発光分析 / 誘導結合プラズマ / ICP / 元素分析 |
研究実績の概要 |
単一細胞内の微少量元素分析が実現すると,iPS細胞の分化過程や,がんの発生メカニズムの解明等につながると期待されている。そこで我々は,単一細胞中に含まれる多種類の元素を同時に分析するため,180 pLの液滴を一滴ずつ分析装置へ導入でき,かつ一つの細胞を内包できるドロプレット試料導入装置の開発を行ってきた。この装置を誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)に適用することで,直径3~8ミクロン程度の単細胞藻類1細胞に11~80 fg含まれるCa, Mg, Feなどの多元素同時分析に成功した。しかし,このシステムを適用した分析装置による分析値の妥当性を評価することができなかった。つまり,装置から得られる分析値の信頼性を評価するには,元素量が一定量値付けされた標準物質を用いて定量的な分析を行い,議論を行う必要がある。 そこで今年度は,生体細胞標準物質の代替として使用できる疑似細胞試料の選定を行うため,含有元素や熱分解特性が異なるいくつかの粒子の分析を行った。生体細胞の模擬試料は,大きさがヒト細胞と同程度の直径5~30ミクロンであり,体積の偏差が少ないことなどを主な条件として選定した。まず,1粒子に含まれる平均元素含有量の値付けを行うために,湿式灰化法を用いて粒子を溶液化し,通常の溶液噴霧導入法とICP質量分析装置(HP7500, Agilent Technologies)によって一粒子中の平均含有量を測定した。次に,ドロプレットICP-AESシステムを使用して1粒子ごとの分析を行い,それぞれの粒子の発光スペクトルと元素含有量との相関を測定し,発光スペクトルと元素含有量との相関関係を比較し,各粒子について生体細胞標準物質としての妥当性を検討した。その結果,磁性ラテックスが擬似細胞試料として使用できると判断した。平均含有量との相関や元素のスペクトルが確認できなかったのは,融点の違いやマトリクス効果などがあるためと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目標は,単一細胞中の微量元素の測定であるが,現在までに単一細胞の,マルチチャンネル発光分光分析,四重極型質量分析装置による単一元素分析,飛行時間型質量分析装置による多元素同時分析,のすべてを実現している。分析感度の目標は,ゼプトグラムオーダとしているが,四重極型の質量分析装置では1.1agと,その直前に迫っている。標準物質については磁性ラテックス粒子が使用できると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
(a) ドロプレット用脱溶媒システムの最適化 これまでの研究により,ドロプレットの溶媒を加熱して気化し,再度冷却して溶媒を凝結除去する,脱溶媒システムの試作に成功した。ただし,加熱が急なためか,細胞の破壊が生じている可能性が示唆された。今年度は,加熱温度の勾配を考慮した脱溶媒システムを構築し,単一細胞分析に使用する。 (b) パルス同期ドロプレット分析システムの開発 一つの細胞は二回測定できないため,多量元素から極微量元素までを一度に全て測定する必要がある。高濃度元素はプラズマへの導入直後に,マルチチャンネル分光器で100アトグラムオーダの発光分光分析を行う。次に,差動排気で真空容器に導入されたイオンは飛行時間型質量分析装置で全元素分析する。発光信号の取得,イオンの射出,イオン信号の取得のタイミングを同期させ,過渡的なドロプレット信号に適したパルス同期分析システムを開発する。また,細胞分析に適した信号処理についても検討する。 (c) MEMSを用いた細胞サンプリング・分析システムの開発 細胞を個別に分析するという目的では,ドロプレットネブライザの項に記述したように,顕微鏡下で一細胞ずつ吸い取ってサンプリングする方法で十分である。しかし,多数の細胞を連続的に分析する事を目的として,MEMSの技術を用いて細胞サンプリングシステムを構築する。昨年に引き続いて,マイクロプラズマによる発光分析システムについても検討を行う。 (d) 単一細胞の分析 これまでに試作した装置を用いて,単一細胞の分析を実施する。細胞としては,単細胞藻類,HeLa細胞,iPs細胞などの適用を検討する。(d) の結果より,装置固有の信号偏差が明らかになるので,その値を用いて,単一細胞中の元素濃度の偏差や分散について調査する。
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