研究課題
本研究では、二次元もしくは三次元の「足場」としてDNAナノ構造体を利用して、酵素そして酵素機能を補助する受容体を1分子ずつ数量と配向を精密に制御して配置した反応場を構築する。これをもとにして、段階的に進行する化学反応場を構築し、分子コンビナートの構築原理を確立する。段階的に進行する化学反応として、キシロース還元酵素(XR)とキシリトール脱水素酵素(XDH)を用いた。DNAナノ構造体上にこれらの酵素を配置するため、XRと亜鉛フィンガータンパク質アダプターの融合タンパク質zXR、XDHとベーシックロイシンジッパータンパク質GCN4アダプターの融合タンパク質G-XDHをそれぞれ作製した。得られたアダプター融合タンパク質z-XRとG-XDHはそれぞれもとの酵素と同等もしくはそれ以上の活性を示した。DNAナノ構造体はRothemundが開発したDNAオリガミ法により構築した。タンパク質を目的アドレスに配置したDNAナノ構造体は、原子間力顕微鏡(AFM)を用いた一分子観測により同定、収率を評価した。その結果、キシロース還元酵素とアダプターの融合タンパク質z-XRは、期待したアドレスに50%程度しか配置されないことが明らかになった。そこで、設計通りにタンパク質を配置したDNAナノ構造体を高効率で作製するために、(1)チオールアルキル化反応を利用してアダプターとDNAナノ構造体の特定アドレスDNA間に共有結合を形成、および、(2)SNAPタグをアダプターに融合し、タグ基質をDNAナノ構造体に導入、反応させて、安定かつ高収率に目的とするタンパク質をDNAナノ構造体上に配置する方法を検討した。その結果、SNAPタグを融合したモジュール型アダプターは、ほぼ定量的に目的とするDNAナノ構造体の位置にタンパク質を配置することが出来ることがわかった。
2: おおむね順調に進展している
我々が開発した亜鉛フィンガーアダプターを利用してキシロース還元酵素XRとアダプターの融合体z-XRを合成・精製し、z-XRのDNAオリガミ上への配置評価・解析実験を行った結果、DNAオリガミ上でのz-XR結合安定性に予期しなかったばらつきが見られたため、新たなアダプター設計・調整と詳細な評価を行なった。SNAPタグを亜鉛フィンガーアダプターに融合したモジュール型アダプターzSは、タグ基質を導入したDNAナノ構造体上のアドレスとほぼ定量的に反応し、安定かつ高収率に配置されることを確認した。蛍光タンパク質と融合させたモジュール型アダプターGFP-zSもまた、ほぼ定量的に目的とするDNAナノ構造体の位置にタンパク質を配置することが出来ることがわかった。キシロース還元酵素XRとモジュール型アダプターの融合体zS-XRを合成・精製したところ、もとのXRと同等の酵素活性を示した。また、zS-XRのDNAオリガミ上への配置評価・解析実験を行った結果、DNAオリガミ上に設計したアドレスに、ほぼ定量的に配置できることがわかった。加えて、zS-XRを配置したDNAナノ構造体のAFM解析により、設計したアドレスに配置されたzS-XRの分子数を見積もることが可能であった。XDHとベーシックロイシンジッパータンパク質GCN4アダプターの融合タンパク質G-XDHは、モジュール型アダプターを融合したzS-XRとは異なるDNA配列に配置することが出来る。アドレス位置を設計したDNAナノ構造体を用いてXDHとzS-XRを10 nm、40 nm、70 nmの間隔で配置し、それぞれについてキシロースの反応を解析したところ、XDHとzS-XRを10 nmの距離で配置した系においてキシリトールおよびキシルロースの生成が確認できた。
XDHとベーシックロイシンジッパータンパク質GCN4アダプターの融合タンパク質G-XDHと、モジュール型アダプターを融合したzS-XRとを、同じDNA構造体上の異なる箇所に配置することが可能になった。G-XDHとzS-XRの距離を10 nm、40 nm、70 nmの間隔で配置したところ、距離が近いほど高収率でキシルロースが生成することがわかった。この系を利用して、今後はG-XDHとzS-XRのモル比が2段階反応の進行効率にどのような影響を与えるか、G-XDHとzS-XR を配置するDNAナノ構造体の形状を変化させると、それぞれの反応にどのような影響があるかを検証する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (14件) (うち招待講演 4件) 備考 (1件)
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http://www.iae.kyoto-u.ac.jp/material/jp/index.html