研究課題/領域番号 |
25248044
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
笠井 均 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (30312680)
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研究分担者 |
中澤 徹 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30361075)
村上 達也 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 准教授 (90410737)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ナノ薬剤 / 再沈法 / 抗がん薬 / 点眼薬 |
研究実績の概要 |
本年度も引き続き、対象化合物としては、抗癌性化合物がSN-38とポドフィロトキシンを、緑内障用点眼薬に使用する化合物がブリンゾラミドを取り上げた。多種の化合物をナノ粒子化できる置換基として、ヒノキチオール基、コレステロール基、トリメチルロック基を選択した。その結果として、薬効化合物に難水溶化が施され、再沈法により、100nm以下にサイズ制御された薬剤ナノ粒子が得られた。さらに、同薬剤ナノ粒子の水分散液は、1週間以上の安定な分散性を有することが明らかとなった。 ブリンゾラミドに関しては、コレステロール基を修飾した場合、ナノ粒子が眼内で加水分解が進行しないことは昨年度報告したが、トリメチルロック基を付けた場合、ナノ粒子内の構成化合物が加水分解可能となり、ラットを用いて、眼内の前房水を採取した結果、加水分解のブリンゾラミドが検出されることが判明した。また、市販薬に比して、薬剤の眼内移行性や眼圧下降効果が約5倍以上向上することが明らかとなった。 抗癌性化合物にコレステロール基を修飾した化合物のナノ粒子においては、マウスにおける薬剤の血中滞留性を評価した結果、市販薬であるイリノテカンに比べて、数倍以上長く滞留することが明らかになっており、担癌マウスを用いた抗腫瘍性の実験を行った。その結果、市販薬のイリノテカンに比べて、抗腫瘍性が約10倍向上することが明らかとなった。現在、薬剤の最適化を目指して、ヒノキチオール基やコレステロール基に類似した置換基を就職した抗癌性化合物のナノ粒子を作製し、担癌マウスを用いた実験において、それらの抗腫瘍性と毒性評価を遂行している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
抗癌性化合物も点眼化合物においても、研究題目の通り、従来とは逆転の発想と言える薬化合物への難水溶化を施し、100nm以下のナノ薬剤が得られ、同薬剤のin vitro実験に関して、高い薬理活性を有することが既に判明している。ここまでは、当初の計画の想定内といえるが、マウスやラットを用いたin vivo実験において、市販薬の薬効と比べて、十分に凌駕するような薬効を有するナノ薬剤であることが示されたことは非常に興味深いといえ、当初の計画以上に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究における構想は基本的に正しいことがわかってきたが、ナノ薬剤の毒性評価などは今後の課題である。毒性評価において、問題がなければ、今後ナノ薬剤の研究分野に大きな貢献を示すことができると考えられる。同時に、数ある難水溶性置換基の中でも、最適な置換基を選出するための条件を見出すことが重要であると考える。
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