研究課題/領域番号 |
25248051
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
菅野 了次 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (90135426)
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研究分担者 |
川路 均 東京工業大学, 応用セラミックス研究所, 教授 (10214644)
田村 和久 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究副主幹 (10360405)
今西 誠之 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20223331)
平山 雅章 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (30531165)
鈴木 耕太 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 助教 (40708492)
園山 範之 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50272696)
米村 雅雄 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特別准教授 (60400602)
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研究期間 (年度) |
2013-10-21 – 2016-03-31
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キーワード | 電気化学材料 / 蓄電池 / エピタキシャル薄膜 / 全固体電池 / 空間電荷層 / 薄膜電池 |
研究実績の概要 |
本研究は,次世代蓄電デバイス開発のための新たなサイエンスの創成に向け,固体と固体との界面反応の解析と制御を目的とする.平成26年度は,固体固体界面の形成による電気化学特性の変化を調べ,以下の成果を得た.(1)単一配向したエピタキシャルモデル薄膜を用いて,ペロブスカイト酸化物固体電解質中のリチウムイオン拡散の異方性を検出し,(110)面で電極材料との固固界面を形成することで,電極反応速度を向上できる可能性を見出した.(2)ペロブスカイト酸化物固体電解質と負極界面にLa-Al-Oペロブスカイトを導入すると,低電位領域における固体電解質の分解を抑制できた.ペロブスカイト型電解質を用いた薄膜電池作製に必要な合成手法をほぼ確立した.(3)正極/固体電解質/液体電解質/負極からなるモデル電池を構築し,固固界面構造のその場観察を実施した.Li過剰層状岩塩型正極では,固固界面は固液界面と比較して,可逆性に優れたインターカレーション活性を示し,固液界面に匹敵する反応速度を示すことを明らかにした.(4)全固体薄膜電池の界面構造をその場観察するための反応セルの設計した.27年度にin-situ測定技術による反応時における固体固体界面反応を解析し,界面制御指針を提示する.(5)遷移金属の異なるリチウム含有酸化物(Li-M-O)を積層させると,成膜プロセス中の熱拡散によりLi-M-M’-Oの組成の固溶体薄膜が形成することが明らかになった.成膜温度,最適なバッファー層の導入などにより相互拡散を抑制した合成プロセスの検討が必要であることが分かった.(6)リチウム過剰層状岩塩正極では,固液界面における表面構造変化が結晶方位により異なりその可逆性が充放電反応特性を決定付けることを見出した.固固界面においても同様の現象が予想されるため,積層により固体電池作製時に結晶方位を考慮する必要性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,1.リチウム電池界面反応の解明、2.電極・電解質の新材料創成、3.高密度・高出力の全固体電池の創成を目指して次の実験を行っている.(a)理想二次元電極/固体電解質界面の構築,(b)量子ビームを用いた界面反応のその場観察,(c)TEM観察、NMR測定、熱測定によるex-situ測定,(d)原子レベルの組成制御による薄膜作成法による空間電荷層構造制御,(e)空間電荷層を制御した電極・固体電解質界面を有する全固体電池の創成.平成25年度に主に固固界面合成手法の確立と固液系における界面反応解析を進めたのち,26年度は固固界面と電気化学特性との関連を明らかにすることで,固固界面制御による電池特性向上が可能であることを実証できた.一方,全固体電池は合成時に電極材料と固体電解質との間のイオンの相互拡散に課題があり,モデル電池の作製に至っていない.反応性が低い材料系を設定すること,金属負極を用いることで解決の目処はたっており,27年度にモデル電池の動作を達成し,界面反応解析を行うことが可能である.原子レベルでの組成制御で実現する全固体蓄電デバイスのプロトタイプセルを提案できると見込まれる.
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今後の研究の推進方策 |
新規な蓄電デバイス創成を目標とし,以下の3課題の解決に向けた取り組みを行う「1. 界面反応解明」「2.新材料創成」「3.高密度・高出力の全固体電池の創成」.前年度まで項目1,2について重点的に実施し,界面構造解析の手法を確立し,新機材料の創成を行った.本年度は引き続き項目2に注力し,項目3に展開する.項目1は,これまでに構築した固固界面制御手法と界面構造解析手法を使い,着実に明らかにしていく.項目2は地道な探索を続けていくほかにないが,界面制御により電気化学特性が大きく変化することは見出しており,合成と評価解析をバランスよく実施していくことで実施期間内での新材料創成が期待できる.項目3は,全固体モデル電池の構築が課題であり,材料の組み合わせなど検討することで電池動作を達成する.具体的には次の実験,および解析を進める. 新材料および界面創出:エピタキシャル法とスパッタリング法により電極および電解質材料の積層プロセスを利用した新材料合成,並行して多結晶薄膜を作製する. 界面構造解析:放射光X線・中性子を用いた測定技術で新材料の構造解析,電池動作時の固体/固体電解質界面の構造変化を測定する.界面数10 nm領域における組成・構造から,新材料の物性と電気化学特性さらには空間電荷層形成の機構,電気化学特性との関連に関する議論を行う. 空間電荷層の構造制御とモデル電池作製:電極と電解質間に酸化物で緩衝層を導入し,空間電荷層形成への影響を解明する. 超格子構造や傾斜構造など,様々な積層形式を検討して,イオン拡散・貯蔵に適した新規な積層構造の創出.原子レベルで制御された電極/固体電解質界面を有する全固体電池を構築し,高密度・高出力化を実現可能な電池系を模索する.以上の研究を進めると共に,各研究事項の成果を取りまとめ,最終的に全固体電池を実現するための空間電荷層制御の系統的な指針を明らかにする.
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