研究課題/領域番号 |
25248053
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
梶 弘典 京都大学, 化学研究所, 教授 (30263148)
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研究分担者 |
福島 達也 京都大学, 化学研究所, 助教 (70705392)
佐藤 敏文 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80291235)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 有機薄膜太陽電池 / 固体NMR / 特殊形状高分子 / 階層構造解析 |
研究実績の概要 |
バルクヘテロ接合型有機薄膜太陽電池は、次世代型太陽光発電システムとして期待されている一方で、実用化の礎となる有機太陽電池の基礎科学には、未開拓の部分が多い。本研究では、まず、バルクヘテロ接合型有機太陽電池の特性向上のための基礎科学の構築を目指す。特に、種々の構造を有する高分子を新規に合成する試みを行うとともに、合成に成功した高分子に対しては各種解析および素子作製を行い、材料-デバイス作製プロセス-構造-太陽電池特性の一連の相関解明を目指す。また、得られた知見に基づき、有機太陽電池特性向上に対する指針を得ることを目指す。 昨年度は、次の研究を進めた。まず、新規高分子に関し、特に、十分な分子量を有する環状高分子の合成に成功した。この高分子をドナー材料としたバルクヘテロ接合型有機薄膜太陽電池を作製し、従来の高分子より特性の高い素子を作製することにも成功した。現在、星型高分子に関しても実験を進めている。また、新規直鎖状高分子に関しても手がけ、短波長吸収のドナー高分子の中では、高い光電変換特性を得ることに成功している。 また、一昨年度、本予算で購入したスロットダイコーターに関し、昨年度、有機薄膜の塗布条件を探索し、塗布条件の各パラメーターが膜の均一性と膜厚の調節にどのように寄与するかを明らかにした。その知見に基づき、各パラメーターを調節することにより、rrP3HT/PC71BM 混合膜では 20-1000 nm の範囲で、PTB7/PC71BM 混合膜では 50-800 nm の範囲で膜厚を調節した均一薄膜を作製することに成功した。さらに、その手法で有機太陽電池素子を作製した結果、従来のスピンコート法で作製した素子と同程度、あるいは、素子系によっては、スピンコート法での素子を上回る光電変換特性を得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究は順調に進展している。新規直鎖状高分子、および、新規特殊形状を有する高分子を用いた素子作製を行い、特性の向上が確認できた点、順調な進展と言える。また、本課題の達成に重要なスロットダイコート法による素子作製に成功したのみでなく、スピンコート法で作製した素子と同程度か、素子系によっては、当初の予想を超えて、それ以上の特性が得られた点も進展が大きい。当初予定していたインクジェットプリンターでの素子作製をスロットダイコーターに変更したことは正解であったと言える。以上のことから、当初の計画以上に研究が進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
佐藤グループでは、昨年度に引き続き、新規特殊形状高分子の合成を進める。梶グループでは、昨年度、スロットダイコート法により均一な膜厚を有する有機活性層の塗布に成功した。スピンコート法よりも幅広く膜厚を制御できることから、今後、有機太陽電池素子の膜厚依存性に関し、検討を深める。また、今年後は、特に、添加剤の影響を中心に、溶媒、熱処理の効果に関して詳細に検討を行い、光電変換効率に与える影響について明らかにする。佐藤グループで新たに合成された新規特殊形状を有する高分子にも本手法を展開し、本課題の目的である、材料-デバイス作製プロセス-構造-太陽電池特性の一連の相関解明を進める。また、さらに劣化解析に関しても検討を進めたいと考えている。
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