研究課題/領域番号 |
25249010
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
加藤 孝久 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60152716)
|
研究分担者 |
崔 ジュン豪 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30392632)
川口 雅弘 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 事業化支援本部高度分析開発セクター, 研究員 (40463054)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | トライボロジー / 摩擦制御 / カーボンンナノパーティクル / 表面力 |
研究概要 |
銀などの貴金属のマトリクス中に注入されたカーボンイオンは貴金属には固溶せず自ら照射欠陥をマトリクス中に生成しながら、粒界や転位、表面などエネルギー利得の多いサイトへと拡散される。欠陥においてはエネルギー的な利得が大きく,生成された核はエネルギー的に安定する大きさまで球形に成長する.これを利用して、等質粒径カーボンンナノパーティクル(CNP)の合成を試みる.PBII法を用いたCNP合成プロセスにおいて重要となるバイポーラPBII装置の特性について理解し,注入に最適な条件について検討を行った.イオン注入シミュレーションの結果より,バイポーラPBII装置においては-20kVを印加することにより,より深く注入され,かつ基材の銀がスパッタされにくいということが明らかになった.またイオン源となるプラズマ生成においては,ラングミュアプローブによるプラズマ計測により,正電圧バイアス,およびチャンバー内圧力を低くすることにより,プラズマ密度を低くすることが可能であることを明らかにした.またプラズマ密度が低い場合,電子温度が高エネルギー側に広く分布するため,電子と粒子の非弾性衝突によるエネルギー損失を防ぐことができ,イオンに関して高いエネルギーを保ったまま基材に注入できることが有効であることが分かった.また、表面力測定装置を導入して、新しいコーティングの表面力と摩擦力との関係を明らかにするための、基礎データ取得のための実験を開始した.その結果、表面エネルギーと表面力とはこれまでに言われていたような一義的な関係な関係が成り立つには制限があること、そして、摩擦力は表面エネルギーよりも表面力に深く関連することが明らかになった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は表面の被覆材料の合成を行うとともに、そのトライボロジー応用による摩擦制御を、研究期間3年で行う計画である。一年目は被覆材料の合成法に集中し、合成のパラメータ(銀薄膜成膜,イオン注入,熱処理)の設定により意図するものが概ね得られるようになった.また、表面力測定装置を導入して、その操作も順調に取得した.
|
今後の研究の推進方策 |
一年目に得た知見をもとに、CNP被覆膜をパラメータの設定を変えて、成膜を繰り返し、その組成、化学的特性、機械的強度、表面特性を計測する。そして、摩擦実験を行い、新しい被覆材料の耐久性を計測し、より耐久性の高いCNP被膜の開発に取り組む。また、表面力測定を真空中で、かつ温度制御ができるように改良して、より精度の高い表面力測定に取り組み、これによって摩擦力と表面力との対応を高精度で明らかにする。
|