研究実績の概要 |
平成26年度に完成したモジューラ・マルチレベルDSCC (Double-Star Chopper Cells)インバータは,アーム当たり8台のチョッパセルをカスケード接続した回路構成であり,その定格は三相400V,20kW,50Hzである。これは,大学の実験装置としては世界トップレベルのものである。このDSCC変換器を用いて誘導電動機(三相380V,50Hz,15kW,4極)と永久磁石同期電動機(三相360V,75Hz,15kW,6極)の駆動実験を行い,良好な運転特性を確認した。しかし,この駆動システムには発電制動の機能を有していなかった。 平成27年度は,従来の一般的な集中発電制動方式に対して,DSCC変換器に適した分散発電制動方式を提案した。これは,すべてのチョッパセルにパワー半導体デバイス(1個)と制動抵抗(1台)を接続し,発電制動の機能とチョッパセルの過電圧保護機能を兼用できる点に特長がある。平成27年度末までに分散発電制動の基本動作特性を実験で確認した。 平成28年度は,分散発電制動機能を追加したDSCC変換器を用いて誘導電動機(三相380V,50Hz,15kW,4極)の発電制動実験を詳細に行った。その結果,分散発電制動は安定に動作し,十分に実用に供することができることを確認した。続いて,電動機・負荷の総合完成モーメント,各制動抵抗の所要容量(kW)と制動時間の関係を理論的に導出し、回路シミュレーションと数値解析,さらに実験結果との比較によって理論解析の妥当性を検証した。 これらの研究成果は,「モジューラ・マルチレベルDSCCインバータを用いた誘導電動機の発電制動」と題する論文として電気学会論文誌D(産業応用部門誌)の2017年2月号 (vol. 137, no. 2, pp. 175-182) に掲載された。
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