研究課題/領域番号 |
25249034
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
亀井 一人 名古屋大学, グリーンモビリティ連携研究センター, 招へい教員 (10527576)
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研究分担者 |
原田 俊太 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 助教 (30612460)
宇治原 徹 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 教授 (60312641)
加藤 正史 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80362317)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 結晶成長 / ドーピング |
研究実績の概要 |
SiCは次世代パワーデバイス用材料として期待されている。パワーデバイスの低損失化においては、半導体材料の低抵抗化は不可欠であり、そのためにはドーピング濃度を高くする必要がある。SiCにおいてはn型ではNをドーパントとして用いるが、Nのドーピング濃度を高くしていくと、積層欠陥が導入されてしまうことがわかっている。また積層欠陥はパワーデバイスの性能を著しく劣化させる。つまり、積層欠陥の導入を抑制しながら高いドーピング濃度を実現する技術開発が必要となっている。積層欠陥の形成メカニズムは2段階で考える必要がある。一つは、積層欠陥の起源がどのように形成されるか(起源は何か?)、もう一つは、それがどのように拡張していくか、である。積層欠陥の起源には、基板結晶加工時導入される表面近傍におけるダメージ層や、結晶中に存在する転位である。特に、転位に関しては、我々はこれまでに溶液成長法を用いることで、転位密度が著しく低い、超高品質結晶成長を実現している。つまり、溶液成長をもちいることで、積層欠陥の起源を減らすことができる。また、後者の拡張過程については、不純物元素の周りに生じる歪み場や、積層欠陥の導入によって局所的にバンド構造が変化することで、電子の全エネルギーが減少することによるものの二つが考えられている。これらは、局所的な歪みや構造変化を抑制するための新たなドーピング技術が必要となる。 本研究では、本年度、溶液成長法により超高品質結晶を実現し、さらにNのドーピングも行った。また、その際に形成される積層欠陥密度の測定も行った。その結果、積層欠陥密度が増加し始めるN濃度は他の手法とあまり変化がないことがわかった。また、新たなドーピング手法として、第三元素の影響に関しても調べた。本年度は、まだ第三元素の同時ドーピングした試料作製でとどまっているので、次年度さらに詳細を調べる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
■ n型半導体とp型半導体の実現: NドーピングおよびAlドーピングの技術そのものは既に確立し、特にAlドーピングでは他の結晶成長手法では実現し得ないドーピング密度を実現している。 ■ 超高品質結晶成長技術の確立: 溶液成長における条件を最適化することで、積層欠陥の原因となり得る転位の密度を、極めて低い値にすることには成功している。これらの転位が原因であれば、転位密度の減少と積層欠陥の減少は相関があるはずであるが、その取得までは至っていない。 ■ 成長過程におけるドーパント分布の解明: 溶液成長過程においては、必ずしもドーピングが一様には生じず、空間分布ができてしまう。本年度までに、これらの空間分布に成長表面のモフォロジーが大きく影響することを明らかにし、均一ドーピングのための指針も得ている。 ■ 第三元素の添加による積層欠陥抑制効果の検証: 本研究ではドーパント元素周りの歪みや、バンド構造制御において、第三元素の同時ドーピングが重要と考えている。現在、約20種類の第三元素の同時ドーピングを試しており、試料はできつつあるので、今後積層欠陥の観点より、評価する必要がある。 ■ TEMによる評価技術の確立: 積層欠陥の拡張は当然ながら結晶成長過程で起こる。そのため、高温環境でのTEM観察手法を確立し、観察を行った。
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今後の研究の推進方策 |
■ 超高品質結晶による積層欠陥抑制効果の確認: すでに高品質結晶を実現することには成功しているので、今後欠陥密度と積層欠陥密度との相関関係を取得し、その効果を確認する。 ■ 第三元素添加の効果の確認: 第三元素添加試料は作製してあるので、今後、積層欠陥評価を行う。それにより、最適な第三元素を特定する。
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