研究課題/領域番号 |
25249048
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
野田 実 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (20294168)
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研究分担者 |
福澤 理行 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (60293990)
山下 馨 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (40263230)
寒川 雅之 新潟大学, 自然科学系, 助教 (70403128)
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研究期間 (年度) |
2013-10-21 – 2017-03-31
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キーワード | バイオセンサ / リポソーム / 診断チップ |
研究概要 |
本年度の研究実施計画に基づき、I.バイオ分子認識ナノ分子素子としてのリポソームの物理的分子状態制御については、①センサ検知部での溶液中溶媒蒸散を極力抑制するため、1.検知部リポソーム分子集合安定化技術として、1)液滴封止構造の作製と同構造のリポソームカンチレバーセンサ部への適用を行った。液滴の溶媒蒸散を抑制する樹脂膜封止構造をポリジメチルシロキサン(PDMS)を用いて作製した。PDMSはゴム弾性による大きな復元力を持つためシリンジ針による液滴の導入後、導入孔が自然に塞がり液滴の蒸散を抑制できる。今回作製では1日以上経っても蒸発しない。0.1-1μLの1日オーダーでの揮発抑制を実現でき検出特性が安定化するとともに、上記カンチレバーセンサ出力の十分な経時特性の測定が可能となりその結果、同一濃度で異なるターゲット蛋白質分子にて定性的・定量的に顕著に異なるセンサ出力の経時特性を得た。またI.では②溶液の連続的な注入・排出を目指してマイクロ流路構造を作製した。センサ検知部への溶液の連続的な注入と排出を可能としてリポソームカンチレバーアレイセンサの第1段階試作を行った。これはII.2.アレイセンサチップ構成の一つと考えている。II.アミロイドーシスセンサ応用への挑戦では、特に、生体膜模擬リポソーム分子表面でのアミロイドベータ(Aβ)線維伸長の可視像検出技術の検討を開始した。生体膜模擬リポソーム分子表面でのAβ線維伸長を検出するための光学的手法について複数の候補手法を検討し、原理検証のための光学系を構築した。そこでは動画像処理手法の適用可能性も考慮して設計した。蛍光センサアレイではその出力パターンを解析するため、種々のイメージングプロトコルに対応可能なインテリジェント蛍光イメージャを新たに設計し、測定ハードウェア部は本年度物品費にて新規購入の生物用顕微鏡をベースに構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究調書での研究計画に記載したH25年度での研究項目にはおよそ着手できている。但し各項目で狙っている各特性目標に完全には至っていないので、原理検討、対応技術向上をH26年度も継続して進める。具体的には以下の通り。I.1.1)液滴封止構造の作製は原理的に成功し、前述概要に記載した結果を得た。即ち、研究計画に掲げた樹脂膜封止構造の試作により、長時間の蒸散抑制を実現して安定性改善の可能性を示し、また、マイクロ流路構造を試作し、検知部への溶液の注入と排出を可能とした。I.1.2)マイクロ流路構造でのリポソームSAMインタクト固定化はまだ未着手。II.1.リポソーム分子種選択は、現状のDPPCリポソームの性能の定量的理解を各センシング技術でさらに積んだ後、蛍光センサで使用経験のあるPOPC, DMPCリポソームの予想しうる使用形態から適用したい。II.2.リポソームアレイセンサチップは、カンチレバーセンサでの試作を行い上記液滴封止保持構造を導入し、前述概要に記載した結果を得た。同構造のセンサ特性面への効果をさらに明らかにしたい。II.3.リポソーム表面でのAβ線維伸長の可視像検出技術は、線維伸長の光学的検出手法について原理検証実験の準備が整った。もう一方の光学検出技術である蛍光アレイは、その出力パターンを網羅的に収集するためのハードウェア部の開発はほぼ達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
H25年度に狙った各特性目標実現を図っていくと同時に、研究調書で計画したH26年度新規研究項目を重要度順に優先的、有機的に進める。I.1.1)液滴封止構造については、H25年度に作製した樹脂膜封止構造を各種リポソームセンサに適用し、1日以上の長時間のオーダーでの安定計測を行う。I.1.2)マイクロ流路構造によりリポソームインタクト固定用SAM膜形成、リポソーム固定、バイオ分子計測、洗浄を連続的に完全な液体中の系で行う。これらをII.2.におけるアレイセンサチップ用に具現化する。II.3.Aβ線維伸長の可視像検出技術、H26新規II.4.同システム化は、H25年度に構築した光学系を用いた原理検証実験を進めると共に、既開発の動画像処理手法(高時間分解能経時特性評価手法など)の適用も検討し、検討中の蛍光イメージャとのシステム化を進める。H26新規III.1.蛍光センサアレイ(イメージャ)については、新規II.5.の測定データ処理と関係する統計的識別手法の採用を念頭に、イメージングおよび識別検証のソフトウェア部を開発する。また、蛍光センサアレイ出力パターンを網羅的に収集するため、被測定バイオサンプルおよびアレイ構造の詳細打合せに基づいて、イメージングプロトコルを確立させる。
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