研究課題/領域番号 |
25249049
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
斗内 政吉 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センター, 教授 (40207593)
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研究期間 (年度) |
2013-05-31 – 2016-03-31
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キーワード | テラヘルツ波 / 狭帯域 / デバイス検査 / 物性計測 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、前年度に構築した波長可変狭帯域テラヘルツ波発生・検出システムに超伝導転移端検出器を組み込み、発生するテラヘルツ波のエネルギーの絶対評価を可能とした。これにより、狭帯域テラヘルツ波の波形の時間領域測定と、テラヘルツ波のパワーおよび電界の同時計測が可能となった。測定の結果、0.85THzにおいて1パルスあたりのエネルギーが3.5nJでピーク電界強度が1.3 KV/cmであった。本システムを用いて、実際の材料やデバイスの計測を行った。 先ず、このシステムを用いて超伝導体のテラヘルツ波の透過率の温度依存性を計測した。その結果、テラヘルツ波の周波数を変化させると、超伝導ギャップに起因する吸収による透過率の減少が開始する温度が変化した。これは、超伝導ギャップとテラヘルツ波のエネルギーが一致する温度より低温でテラヘルツ波の吸収が起こるためであり、狭帯域テラヘルツ波光源が良好に動作していることを示している。 また、本システムを用いて、ボロメータアレイ型非冷却テラヘルツイメージャ(THzカメラ)の性能評価を行った。THzカメラは広範囲なテラヘルツ波イメージングをリアルタイムで行う事が可能であるため、次世代の非破壊検査技術やセキュリティ検査、病理診断技術に利用可能であると考えられている。これまで、0.5THz~1THzの周波数範囲での性能計測は、適切な光源がないため行われていなかったが、本システムにより計測に成功した。その結果、0.85THzにおいて雑音等価電力が0.22pW/(Hz)1/2程度であることが分かった。 このように、本システムが、材料計測やデバイス計測に有用であることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では、構築した狭帯域テラヘルツ光源による、機能性材料や高周波デバイスの測定を行う事となっており、超伝導体およびテラヘルツカメラの計測を実施したことから、ほぼ予定どおり研究が進展していると考えている。計画では26年度よりポンプ・プローブシステムの開発を開始することになっており、これは達成できていないが、超伝導検出器によるエネルギーの絶対値測定を可能とするなど、当初の予定を超えた成果もあった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、以下の項目を実施する。 項目1:周波数可変狭帯域時間領域テラヘルツ光源の開発:前年度は超伝導検出器を導入するなどシステムの高度化を行ったが、27年度は、高輝度化とチューナビリティの拡大と言った基本性能のさらなる向上に取り組む。最終的には、中心周波数制御300GHz-3THz、帯域幅10GHz 程度、最大振幅30kV/cm の光源開発を試みる。 項目2:電子材料のテラヘルツ分光:前年度は超伝導体のテラヘルツ分光を行った。今年度は、引き続き超伝導体の分光を行うとともに、ナノカーボンのテラヘルツ物性等にも着手する。また、ポンププローブ法を用いた、光・テラヘルツ波励起ダイナミック物性ならびに非線形テラヘルツ物性の解明を行う。 項目3:高周波電子デバイス評価システムの開発:前年にはテラヘルツカメラの計測を行ったが、本年度もテラヘルツカメラを中心に、高周波デバイスのテラヘルツ応答を計測する。先ずは、テラヘルツカメラを用いて前年よりもより高周波の波長1.5THz程度の高周波応答を計測する。
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