ナノ磁性体に磁界を印加した状態で大きなスピン流を注入すると、磁界によるダンピングトルクとスピン流によるスピントルクが釣り合い、持続的な磁化の回転運動(自励発振)が誘起される。この発振現象はGHz を超える高速運動であり、直流電流を流すことで高周波電気信号が取り出せるため、ナノサイズのマイクロ波発振器(スピントルク発振器)として注目されている。このスピントルク発振器は、『素子構造が単純で、極微細化が可能』『電流や磁界に依存して、発振周波数が変化』『周波数分散が小さく、熱安定性が良好』など、他の発振器にはない魅力的特徴を有しているが、出力がピコワットレベルと極めて小さいため、実用化が殆どあまり進んでいない。本研究では、高出力化を目的とした革新的素子構造を提案し、その実証実験に着手した。 また、これまでに事前の予備実験で得られた並列結合型スピントルク発振器による出力とQ値の向上と、及び新奇な磁気渦型高周波デバイスの特性に関して、京都で開催された磁性多層膜の国際会議 Metalic Multilayersで発表した。
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