研究課題/領域番号 |
25249054
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
小出 康夫 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 技術開発・共用部門, 部門長 (70195650)
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研究分担者 |
廖 梅勇 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 光・電子材料ユニットワイドバンドギャップ機能材料グループ, 主幹研究員 (70528950)
井村 将隆 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 光・電子材料ユニットワイドバンドギャップ機能材料グループ, 主任研究員 (80465971)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ダイヤモンド / ゲート酸化膜 / 強誘電体 / 窒化アルミニウム / III族窒化物 / ノーマリオフ動作 |
研究実績の概要 |
H27年度の成果は以下の通りまとめられる。 (1)H26年度までに開発してきた高誘電率ゲート薄膜を用いた絶縁ゲート型ダイヤモンド電界効果トランジスタ(MISFET)の重要な動作モードであるノーマリオン/オフ制御に成功した。トランジスタ特性、電気容量特性、および微細構造解析から熱処理による積層酸化膜の反応によって誘発される電荷量制御によってノーマリオフ化することを明らかにした。MIS界面における電荷量の制御が重要であることが判明し、ダイヤモンドパワートランジスタの設計につなげることが可能となった。更にノーマリオフ化プロセスを活用して、ダイヤモンド集積回路の第一歩となる論理インバータ回路の作製に世界で初めて成功した。高誘電率ゲートダイヤモンドMISFETのノーマリオン/オフ制御のメカニズムを解明および論理インバータ回路作製を論文に発表した。同時にノーマリオフ特性を持つダイヤモンドFETに関する特許を出願した。 (2)ダイヤモンド基板上の強誘電体PbZrTi酸化膜(PZT)をFETに展開するために、PbLaTi酸化膜(PLT)をバッファ層としてダイヤモンドMISキャパシタの容量―電圧特性を評価し、良好な強誘電特性が得られていることを実証した。同様にHfO2-SiO2強誘電体薄膜をゲート酸化膜に応用しダイヤモンドMISFETの動作を実証した。 (3)AlN/ダイヤモンドヘテロ接合FETにおける接合界面の微細構造観察結果から、AlN有機金属化合物気相成長(MOVPE)成長前のNH3およびH2雰囲気熱処理によるダイヤモンド表面の水素終端化を実験的に実証し、AlN/ダイヤモンド界面に膜厚1nm以下のアモルファス層が存在することを明らかにし、アクセプタ吸着電荷の安定化層として働くことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ダイヤモンドは半導体材料の中で最も最も熱的・化学的に安定な究極の半導体材料であり、高温・極限環境、および高電力デバイスとしての応用が期待される。しかしながら、n型およびp型ドーパントのイオン化エネルギーが大きく、室温での電気伝導キャリアを確保できない欠点がある。本研究においては、その欠点を解決する原理手法として、強誘電体および高誘電率薄膜が持つ自発分極特性を利用して、電気伝導キャリアを確保・制御する原理の実証を目的とする。最終目標は、電界効果トランジスタを試作し原理実証を行うともにそのメカニズムを解明することによって、ダイヤモンド半導体の界面キャリア制御の新しい学問学理を構築することにある。具体的に提案した手法は、(1)酸化物系の強・高誘電体薄膜の自発および強誘電分極特性に基づく分極電荷密度の電界効果を利用すること、また他の一つは、(2)Ⅲ族窒化物半導体の自発分極特性に基づく分極電荷を利用することであった。本二つの提案に沿って研究を進め、第4年度までに(1)および(2)の手法によるダイヤモンド電界効果トランジスタの提案と実証を進めてきており、当初の計画以上に進捗していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究において開発したスパッタ法ZrO2/原子層堆積法Al2O3スタックゲート酸化膜を用いたダイヤモンド電界効果トランジスタおよびノーマリオフ化プロセスを利用して、(1)ダイヤモンド集積回路の初めての作製、更に世界最高電流密度のダイヤモンドトランジスタの開発を目指し、当初研究目的を超える目標に挑戦する。さらに窒化アルミニウムゲートを用いたダイヤモンドヘテロ接合トランジスタの性能を向上させ、酸化物ゲートトランジスタと同等な電流密度を達成することを目標とする。
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