研究課題/領域番号 |
25249074
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
片山 浩之 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00302779)
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研究分担者 |
原本 英司 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (00401141)
水野 忠雄 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (00422981)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ノロウイルス / 浄水 |
研究概要 |
本研究は、浄水処理の単位プロセスの前後でウイルスを測定することにより目的を達成するという枠組みであり、そのために必要なウイルスの測定法の開発が重要なポイントになる。1)ノロウイルスの感染価を評価するための基礎的な研究、2)水中ウイルスを正確に測定するためのゲノム測定系の開発、および、3)上水道の現場において測定する対象とする水環境のウイルスの測定に関する知見の蓄積、が必要となる。水処理単位プロセスについては、実験室内規模、パイロット規模ならびに浄水場の試料を組み合わせ、総合的にウイルスの挙動解明を行う。また、実際のウイルスリスク評価のためには、環境中に存在しているウイルスの測定が必要となると考えられ、4)水環境のウイルスに関する研究から、ウイルスの安全性について、ウイルスの種類、測定法を論理的に結びつけたモニタリング手法を提案する。 これまでに、1)ノロウイルスの感染価を評価するための基礎的な研究については、従来のEMAを用いたPCRに比べ、塩素消毒後の誤陽性が少ない手法として、Cryonase(RNaseの一種)を用いた方法を確立した。これはEMAでは評価できなかったファージに対しても適用可能であることから、将来的にも有望な手法であると言える。 2)水中ウイルスを正確に測定するためのゲノム測定系の開発については、浄水試料に対して大容量試料からのウイルス検出を試み、DAX-8などの疎水性物質の除去などが有効であることを確認した。3)上水道の現場において測定する対象とする水環境のウイルスの測定に関する知見の蓄積については、トウガラシ微斑ウイルスが高濃度で存在しており、浄水処理工程のモニタリング対象として有効であることが分かってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
塩素消毒やオゾンによる微生物不活化については、粛々と研究が進められている。特に、Cryonaseにより従来よりもプラック法に近い測定値を与える手法が作られたのは大きな進歩であると言える。 浄水処理工程については、実験室で砂ろ過筒を作成し、添加したウイルスの除去能を調べることができるようになっており、順調に進んでいる。一方、浄水場におけるウイルスの除去については、タイのバンコクで実測した実績や広島の庄原市において実測する協力体制が整えられつつあるものの、他の浄水場における試料採取許可などの面で、難しい交渉が必要となってきている。理解を得つつ、協力体制を築くべく努力中である。 タイの浄水場における試料採取については、アジア工科大学院の全面的な協力のもと、非常に貴重なデータが得られた。特に、トウガラシ微斑ウイルスについては、原水の濃度と浄水の濃度をともに実測し、ウイルスの除去率を実際の浄水場において定量的に実測したという意味で、おそらく世界でも初めての知見が得られたと言える。この成果により、水環境学会において、年会優秀発表賞(クリタ賞)を受賞した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの方針通り、ウイルスの除去率と原水における存在状況を調べることにより、水道の安全性を確保するための道筋を明らかにし、水安全計画などに反映させられるような知見を蓄積する方向で研究を進める。 さらに、これまでは現行の日本の浄水場を「クリプトスポリジウム除去可能な」という表現で示してきたが、これは濁度管理としてろ過池出口で0.1度を達成すればクリプトスポリジウムのリスクはない、という厚生労働省の見解に沿った立場で研究を進めようとしてきた。しかしながら、今般のリスク管理の状況を鑑みると、我々の基盤研究においてクリプトスポリジウムの除去能やリスク管理の在り方(水道におけるクリプトスポリジウム等対策指針の見直しを含む)についても検討する必要が出てきていると認識しており、水道の微生物学的安全性の全体を俯瞰した研究にシフトすることとした。そのため、研究分担者として、県立広島大学の橋本温を加え、クリプトスポリジウムの測定についても万全の態勢を整えて、研究を推進するものとする。
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