研究課題/領域番号 |
25249081
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
長谷見 雄二 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40298138)
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研究分担者 |
板垣 直行 秋田県立大学, システム科学技術学部, 准教授 (00271891)
鈴木 淳一 国土技術政策総合研究所, その他部局等, その他 (10453846)
小野 徹郎 椙山女学園大学, 生活科学部, 教授 (30024300)
腰原 幹雄 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (50334321)
原田 和典 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90198911)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 木質構造 / 防耐火構造 / 火災加熱 / ヤング係数 / 曲げ強度 / 熱分解 / 燃焼 |
研究実績の概要 |
(1)常温~100℃の範囲で、木材(スギ、ケヤキ)のヤング係数・曲げ強度の含水率依存性を含水率0~約100%で把握した。(2) 木材が表面に露出する「燃え止まり型木質耐火構造」について、燃えしろ+燃え止まり層(難燃処理木材)のみを再現した小型試験体の放射加熱下の燃焼・分解反応挙動を、燃え止まり層の難燃化レベル、燃えしろ・燃え止まり層の暑さ、加熱条件をパラメータとして実験的に把握した。(3) 実験(2)の解析と実大断面を有する梁試験体の耐火加熱実験により火災加熱後の木材の自消の有無は加熱終了時の断面深部の赤熱反応の有無でほぼ説明できることを明らかにし、このような小型試験により、「燃え止まり型木質耐火木造」を達成する仕様を予測できることを明らかにした。(4) この手法により、全体をスギで構成する「燃え止まり型1時間耐火構造」梁仕様を設計し、その結果、現実に1時間耐火構造として認定取得した。(5) 小型実験及び実大断面梁実験の加熱・加熱終了後の伝熱計算を、難燃木材の分解熱測定データを入力して行い、加熱終了後の自消の有無については、物質異動を無視した計算で再現可能なことを示した。(6) 壁に拘束される軸組の火災と来の力学的挙動について予備的な実験を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(1) 本課題において、達成が最も困難と予想されていた「燃え止まり型木質耐火構造」仕様の工学的予測については、小型試験により適正仕様を予測する手法を開発でき、この手法にもとづいて、各種樹種の中でも最も実現困難とされてきたスギのみによる耐火構造も、梁について実現できた。(2) この経過で、木構造部材の各種防耐火性能のうち、自消性については、部材内の物質異動を無視した伝熱計算で予測可能なことを明らかにできた。(3) 火災加熱される木材の力学的性能の温度・含水率依存性を、スギ、ケヤキについて、防耐火性能評価上、重要な温度範囲で網羅的に解明した。従来、木材における火災加熱時の含水率の変化とその力学的性能への影響は等閑視されていたが、条件によっては極めて重大な影響があることも解明できた。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には、当初予定を変更せずに研究を推進する。耐火木造に関する検討課題は、実用的な技術開発指針レベルでは目標に達しているので、耐火構造については、最終年度は、スギのみによる2時間耐火構造の実現、難燃レベルの低い燃え止まり層による耐火構造の実現など、予測手法の活用可能性の検討に取り組みたい。準耐火構造以下については、2年度までに木材の力学的性能の温度・含水率依存性を明らかにできたので、物質異動を伴う部材内伝熱計算を可能として、火災加熱を受ける大断面木質部材の構造的性能を予測できるようにしたい。木材における物質異動を伴う伝熱過程については、モデルの検証に使える実験データが少ないため、熱分解を伴わない範囲で水分が蒸発する条件での木材の加熱実験を行い、モデルの検証を行う。また、木造では、軸組構造であっても壁等が拘束に寄与することを考慮し、付随する壁の影響も検討できる実験を実施する。
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