研究課題/領域番号 |
25249086
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
掛下 知行 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90127209)
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研究分担者 |
寺井 智之 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (20346183)
福田 隆 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50228912)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | カイネティクス / 核生成 / マルテンサイト変態 / 磁場 / 状態図 |
研究概要 |
マルテンサイト変態は,通常核生成・成長により変態が進行するが,その核生成機構については,未だ十分な理解が得られていない.特に,核生成には,潜伏時間が必要とされているが,なぜ潜伏時間が必要であり,潜伏期間に何が進行しているのかということについては,殆ど解明されていない.この核生成の機構を理解するため,本年度は2種類の合金用いて,磁場下での変態挙動を調査した.磁場を加えることの利点は,母相とマルテンサイト相の自由エネルギー差を磁場挙動を変えることにより自在に制御可能という点にある. 【Fe-23.9Ni-4.0Mn合金(at%)の磁場下でのマルテンサイト変態】Fe-23.9Ni-4.0Mn合金のマルテンサイト相の磁化は母相の磁化よりも大きい.そのため,磁場を加えるとマルテンサイト相の自由エネルギーが母相のそれよりも相対的に低くなる.従って,磁場はマルテンサイト変態を促進することとなる.すなわち,ある温度で磁場を加えると磁場誘起のマルテンサイト変態が生じる.我々は,試料温度を固定し定常磁場あるいはパルス磁場を加えて,マルテンサイト変態が生じる磁場強度を調査した.その結果,広い温度範囲において,マルテンサイト相を誘起するのに必要な磁場強度は,定常磁場よりもパルス磁場の方が高いということを見出した. 【Ni-5Co-36.5Mn-13.5In合金の磁場下でのマルテンサイト変態】Ni-5Co-36.5Mn-13.5In合金の冷却過程で起きるマルテンサイト変態の開始温度ならびに加熱過程で起きる逆変態終了温度を試料に印加する磁場強度を変化させて系統的に調査するとともに,試料の磁場印加過程で生じる逆変態終了温度ならびに磁場除去過程で生じるマルテンサイト変態の開始磁場を温度を変化させて系統的に調査した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は,2種類の合金を用いて平行してマルテンサイト変態に及ぼす磁場効果の調査を行った.ひとつは典型的な非熱弾性型のマルテンサイト変態を示すFe系の合金であり,磁場によりマルテンサイト変態が促進される.もう一つは典型的な熱弾性型のマルテンサイト変態を示すNi-Mn-In系のホイスラー合金であり,磁場によりマルテンサイト変態が抑制される.いずれの合金についても,マルテンサイト変態を誘起する為に必要な磁場強度が磁場掃引速度の影響を強く受けることを明確にすることができた.これらの結果は研究計画段階における予想とほぼ一致しており,来年度以降の研究計画に変更を加える必要がほとんどない.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度以降は,Fe-Ni-Mn合金に加えて,新たにFe-Ni-Cr系合金とFe-Ni系合金を研究対象とする.Fe-Ni-Mn系ならびにFe-Ni-Cr系合金では,パルス磁場を用いることで,マルテンサイト相の核が生成するために必要な時間についての情報を得る.また,Fe-Ni系合金粉末単結晶を用いることで,マルテンサイトの核生成に及ぼす粒界や転位の影響を明らかにする. また,Ni-Mn-In系のホイスラー合金においては,母相ならびにマルテンサイト相の比熱を評価することで,母相とマルテンサイト相の自由エネルギー差を評価するとともに,マルテンサイト変態開始前の潜伏時間に生じる現象について,理解を深めるために,この合金の等温マルテンサイト変態におよぼす,履歴の影響を調査する.
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