研究課題/領域番号 |
25249087
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
古林 孝夫 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (80354348)
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研究分担者 |
高橋 有紀子 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (50421392)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | CPP-GMR / 非局所スピンバルブ / ホイスラー合金 / 高スピン分極率 |
研究概要 |
1)CPP-GMR素子の開発 高いスピン分極率を持つホイスラー合金とAgのスペーサーからなるCPP-GMR素子においては、これまで(001)配向したエピタキシャル薄膜では高いMR値が得られているが、(110)に結晶が配向した多結晶薄膜ではこれに比べ低い値にとどまっている。多結晶薄膜で高い値を得ることが実用上重要である。本年度はこの低いMR値の原因を探るために新たに(110)方向に成長させたエピタキシャル層を用いた素子を作製した。MR測定の結果、同じ材料を用いても(110)配向の場合(001)配向に比べΔRA値は1/2程度と小さい値しか得られなかった。このことは(110)配向のホイスラー合金場合、Agとの界面で大きな格子不整合があるために界面での構造に乱れを生じ、界面での磁気特性が低下したためと推測された。また、さまざまなホイスラー合金薄膜の異方性磁気抵抗効果を測定し、磁気抵抗と実際にその材料を用いた素子のGMR特性とは良い相関があることを見出した。 2)面内スピンバルブ型素子の開発 本年度は作製プロセスとしてネガ型レジストを用いて細線を切り出す方法を開発した。イオンミルの時間を最適化することにより、酸化物等の不純物を含まないオーミック接合を持つ非局所スピンバルブの作製に成功した。その結果、高スピン偏極率材料の1つであるCo2Fe(GeGa)(以後CFGG)をスピン注入および検出層に、Cuを非磁性体として用い、室温で17mΩμm2の大きなスピン信号を得た。一方で、キャップ層にRuを用いたときには、Ruがイオンミルの際に強磁性電極中に打ち込まれてしまいスピン吸収するために得られたスピン信号は8mΩμm2程度と小さかった。今後キャップ層の検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CPPGMR素子においては結晶方位とMR値の関係を明らかにすることができた。今後はこの知見を活かして大きなMR値を持つ素子につなげることができると考えている。非局所スピンバルブ素子に関しては素子加工プロセスを確立することができたので、今後様々な材料の素子の開発につながると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
1)CPP-GMR素子の開発 本年度は(110)配向のホイスラー合金がAgとの大きな格子不整合のためMRに不利であることがわかった。今後はこれを踏まえ、(110)配向のホイスラー合金とも良好な格子整合性を持つ材料の探索、および(001)配向の多結晶膜という2つの異なるアプローチで高いMR値を持つ多結晶素子を実現させたい。また、異方性磁気抵抗効果を用いて材料探索を行い、CPP-GMRに適したホイスラー合金を見出すことを目指す。 2)面内スピンバルブ型素子の開発 これまでは非磁性細線の材料としてCuを用いてきたが、CPP-GMR素子で高い出力を達成しているAgと組み合わせた非局所スピンバルブ素子を作製しさらに大きなスピン信号を狙う。また、界面にごく薄い絶縁体層をよく制御された状態で挿入し、スピン注入効率の最適化を図る。
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