研究実績の概要 |
CPP-GMRの面積抵抗変化量を増大させ高出力を得るためにはスペーサー材料として高い電気抵抗率を持つ導電性酸化物を使用することが有用であると考えられる。本研究ではNaCl構造を持ち、ホイスラー合金とのエピタキシャル成長が期待できるMg0.2Ti0.8Ox (MTO)を用いた。MgO(001)単結晶基板上に、Cr(10)/Ag(100)/CoFeGaGe(10)/Ag(1)/MTO(tSp)/Ag(1)/CoFeGaGe(10)/Ag(5)/Ru(8) (膜厚はnm, tSp = 2-2.5 nm)の膜構成で成膜を行い、上部CoFeGaGe層を付けた後に550°Cで熱処理を行った。その結果、面積抵抗 RA=200 mΩ μm2で最大45%程度の高いMR比が得られた。 CPP-GMRを用いた磁気ヘッドや磁場センサーの実現には、多結晶かつ比較的低温熱処理で、高いCPP-GMR値が得られる材料系およびプロセスの開発が必要である。本研究では、Co2(Mn,Fe)Geホイスラー合金とAg系合金のスペーサー層を用いた多結晶CPP-GMR素子を作製した。化学機械研磨されたTa/Cu/Ta電極上に、スパッタリングにより擬スピンバルブおよび交換バイアススピンバルブを製膜した。擬スピンバルブ薄膜の構造は、Ru(2)/Co50Fe50(1)/CoFeBTa(0-1.2)/CoMnFeGe(5)/Co50Fe50(0.4) /Ag90Sn10(4)/Co50Fe50(0.4)/CoMnFeGe(5)/Co50Fe50(0.4)/Ru cap(組成はat. %、膜厚はnm)である。CoMeFeGeの実際の組成は、Co51Mn13Fe8Ge28 (at. %)であった。成膜はすべて室温で行い、製膜後に真空中で300 °C, 3 hの熱処理を行った。CoFeBTaはアモルファス軟磁性材料であり、下地として用いることによりホイスラー層の規則化を促進し、MRを向上させることが報告されている。測定の結果、面積抵抗(RA)は30 mΩ μm2程度、MR比は25%であった。本研究の多結晶素子は、300 °C熱処理においては、同じ材料を用いたエピタキシャル素子を超える面積抵抗変化量ΔRAが得られた。
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