研究課題/領域番号 |
25249089
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
手嶋 勝弥 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (00402131)
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研究分担者 |
是津 信行 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (10432519)
石崎 貴裕 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (50397486)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | フラックス / コーティング / ビルドアップ / 結晶成長 / 薄膜 |
研究実績の概要 |
平成28年度の研究では,特に成果をあげた①リチウムイオン二次電池(LIB)系と②可視光応答光触媒に応用するための酸化物および(酸)窒化物結晶をモデル結晶材料に選定し,フラックスコーティング法による単結晶超薄膜の作製と評価を継続した。はじめに,①厚さ4umのフラックスコーティングLiNi0.5Mn1.5O4(LNM)結晶薄膜を正極とし,固体電解質にLiPONを,負極に金属Liを用いて全固体型ハーフセルを作製し,そのLIB特性を評価した。その結果,この全固体型ハーフセルは理論容量の約70%の充放電を実現でき,その電極体エネルギー密度は約835Wh/Lを達成した。この全固体型薄膜LIBが電池動作することを確認できた。さらに,フラックスコーティングLNM結晶薄膜のLIB性能を向上するために,遷移金属元素を部分置換したLNMを作製した。具体的には,0.01~0.05at%のCuで部分置換したLNM結晶薄膜をフラックス育成した。Cuにより部分置換することで,酸素欠損LNMでも,金属過剰混入により規則構造を安定化できることを見いだした。次に,②可視光応答光触媒材料として,Ta3N5を主モデル化合物として選択し,金属Ta表面にTa3N5結晶薄膜をフラックスコーティング形成した。単結晶基板表面でのNaTaO3結晶薄膜のエピタキシャル成長知見などを活用し,良好な界面接合をもつTa3N5結晶薄膜を形成できた。その光電極特性を評価したところ,無修飾状態でも比較的高い光電流値を達成できた。フラックスコーティング法により,Ta3N5結晶薄膜と金属Ta基板界面にシームレスな界面を形成できたためと考える。この光電流値は,結晶薄膜の膜厚や界面状態,更には不純物層の形成状態に大きく依存することがわかった。このTa3N5結晶薄膜の成長メカニズム解明に関し,最適な光電極形成条件の探索も開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
集電体(金属基板)表面にフラックスコーティング形成したLNM結晶薄膜を正極活物質層として用い,固体電解質にLiPONを,負極活物質層に金属Liを用いた全固体型LIBハーフセルを作製し,そのLIB特性を評価したところ,比較的良好な全固体型LIB特性を発現することを見いだした。また,可視光応答型光触媒電極でも,フラックスコーティング形成したTa3N5結晶薄膜が比較的良好な光電流値を示すことを見いだした。当初予定の研究実施計画を満足するとともに,最終年度の目標に掲げるデバイス性能評価にも今年度から着手できているため,研究達成度として高評価であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は,今回注力した材料系(①LIB系と②可視光応答光触媒系)を中心モデル化合物にすえ,フラックススクリーニングの最適条件探索を推し進め,結晶成長モデルの考察に取り組む。いずれの材料系でも界面状態は最重要課題であり,傾角粒界の導入による最適デザイン検討や他の事業で見いだしたガラスフラックス概念なども活用し,実デバイスのボトルネックに優れたソリューションを提供する。最終的には,計算科学に基づいて状態図や粒界構造をデザインし,フラックス結晶育成実験系にその成果をフィードバックするとともに,両者の精度を高める。また,全固体型LIBや可視光応答型光触媒だけでなく,バイオマテリアルなどの他分野への応用検討を開始する。
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