研究課題/領域番号 |
25249093
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
進藤 大輔 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (20154396)
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研究分担者 |
村上 恭和 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (30281992)
赤瀬 善太郎 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (90372317)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 電子線ホログラフィー / 帯電 / 絶縁体 / 電子顕微鏡 / 二次電子 / 生体試料 / トナー / 検出器 |
研究実績の概要 |
本研究は、電子線ホログラフィーと新規開発する二次電子検出器を駆使して、絶縁体試料の帯電現象を明らかにすることを目的とする。 二次電子検出器については、設計から装置の作製に移り、試作機のテストを電子顕微鏡を模した簡易的な低加速電圧の電子が発生させることのできる真空装置内で繰り返したのち、最終的に、製品が申請者らが使用している300kV透過電子顕微鏡に実際に搭載させた。現在二次電子のエネルギースペクトルも得られ始めている。全くの新設計の検出器のため調整が続いているが、27年度は本格的に運用される見込みである。 帯電現象の観察については、電子線ホログラフィーによって生体試料(神経周りの微細線維)周辺の電場観察を系統的に行ったところ、振幅再生像中に二次電子の運動によるものと考えられるコントラストが観察され、電磁場解析シミュレーションを通して試料の帯電量等を解析した。その成果を、2014年8月にアメリカ・ハートフォードで開催された米国顕微鏡学会の会議の招待講演において発表した。生体試料以外にも、直径約350nmのシリカ粒子の帯電の評価を系統的に行った。この実験では、照射系の像面に対応する位置に絞りを入れることで電子線の照射領域を制御しながら試料周辺の電場を解析した。その結果、支持膜から発生する二次電子が試料に吸収されるによって試料の帯電量が低減されることが定量的に明らかになった。この成果は2014年9月に名古屋で開催された日本金属学会秋季大会で発表された。また、半導体やエポキシ樹脂等を、集束インビーム装置をもちいて特殊な形状に微細加工し、二次電子が集団的に運動している様子を撮影するための実験を進めている。微細加工されたエポキシ樹脂の帯電の様子の解析結果の一部を2015年3月に東京で開催された日本金属学会春季大会において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の目標は、(1)25年度に設計した二次電子検出器を設備備品として導入し、既存の300kV透過電子顕微鏡に組み込んで、絶縁体試料から放出される二次電子のエネルギースペクトルを計測できる新たなシステムを構築すること、(2)同システムと電子線ホログラフィーの併用について基盤技術の開発を進め、絶縁体の帯電現象に対する複合的な解析技術の確立を図ることであった。 目標(1)に対しては、テスト・試行錯誤を繰り返しながら実機が完成し、納品予定よりも5ヶ月かかったものの、年度内に既存の電子顕微鏡に搭載することができ、スペクトルも得られ始めた。目標(2)に対しては、ホログラムの撮影条件を工夫することで、試料支持膜から放出される二次電子による試料帯電抑制効果を示すデータや、生体試料の帯電と二次電子放出に関する系統的なデータが得られてきており、電子線ホログラフィーの二次電子解析技術としての進展が見られた。よって、本研究課題はおおむね順調に進んでいるものと判断される。
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今後の研究の推進方策 |
検出器の細部(ポールピース上部の電子巻き上げ用コイルの電流値等)の最適化を図り、分析システムとしての装置評価を進める。それと並行し、生体試料や形態制御された絶縁材料などの帯電状態を電子線ホログラフィーを用いて解析する。最終的には、ホログラフィーによる帯電状態の解析と二次電子分析システムで得られた2次電子の分布の解析と組み合わせることで帯電状態と二次電子挙動の関係を明らかにし、帯電現象に関わる知見を深める。 得られた成果を取り纏め、学会発表、並びに論文発表を行う。
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