研究課題/領域番号 |
25249100
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
徐 超男 独立行政法人産業技術総合研究所, 生産計測技術研究センター, 研究チーム長 (70235810)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 応力発光 / 機能材料 / 多機能 / 光特性 / センシング / 発光体 / 損傷診断 |
研究実績の概要 |
応力発光(力学刺激による発光)は構造物の健全性診断など安全安心な社会を支える基幹技術への利用が強く期待されている。本研究は、発現機構や増強法を多角的な視点から究明し、得られた知見をもとに画期的な応力発光材料を新たに創出することを目的としている。具体的には、特異な積層化合物について、応力発光等フォトニクス機能に及ぼす結晶構造、電荷移動、欠陥の影響とその機構を調べ、増感効果の発現機構を明らかにすることにより、それをもとに画期的なフォトニクス新材料の設計・創出を目指している。 本年度は、(1)物性解明について、前年度で開発した新材料(特に、新規開発したナノファイバ、ナノシート)の結合状態の解明だけでなく、ミクロ(結晶構造、格子空孔等)、メゾ(組織構造、転位等)、マクロ(光電流、応力発光、圧電性等)のそれぞれ異なる階層での物性を詳細に検討した。計算と実験の両方から検討を行い、各階層の関連性を多角からアプローチすることで、応力発光に及ぼす結晶構造、電荷移動、欠陥の影響、その機構モデルを構築した。(2)これまでに得られた物性解明を基にした応力発光材料の設計開発を行い、Cu+添加するCaZnOSの新規な青色発光材料の設計・創出に成功し、この材料は斬新な応力消光機能を発現することを明らかにした。(3)新規な低次元SAO結晶物質については、結晶成長の制御手法を見出し、多機能を有する新ナノファイバ、ワイヤ、シート等の低次元結晶体の合成法を確立した。(4)得られた合成法と材料設計指針の有効性を検証し、特異構造のファイバ状新規材料は、高感度応力発光機能を有すること、光電応答性を有するなどの斬新なフォトニクス機能を有することを突き止めた。 得られた成果は特許出願、論文誌・学会等で多数に発表し、そのうちの新規発光結晶の成果写真はセラミックス学会誌の2015年間表紙に選ばれた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでの新材料の設計開発について、様々な力学刺激に応答可能な応力発光体SAO、SSO、及びCaZnOS系新規材料を設計し、赤色応力発光体CaZnOS:Mnをはじめ、超残光機能、クロミズム機能、強い近赤外領域の応力発光機能を示す積層化構造を有する発光体の開発が進み、発光機構の解明を進展した。特に、計画以上進展している点としては、新規な現象である応力消光機能を見出したこと、およびその機構の解明を進めたことである。また、前年度に発見したファイバ状SAO結晶については、その応力発光特性の評価手法を考案し、単一SAOファイバの計測手法を構築した。その結果、ファイバ状SAO結晶が応力発光特性を示すこと、さらには、優れた電気的な特性を示すことを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、SAOEファイバの応力発光特性、電気特性、光応答特性およびそれらの雰囲気、温度、湿度などの影響を定性的に評価できた。今後は、物性解明に注力する。これまでの評価・手法装置の改良、最適化を行い、ファイバ状SAO結晶の電気伝導・光応答特性および雰囲気・温度などの影響を定量的に評価する。また、以下の方策を推進する。 (1)光物性・電子物性を対する影響を定量的に評価するために、温度や湿度・雰囲気の同時制御、また、照射光源、波長制御、レーザ周期等の影響を定量的に検討する。(2)応力発光に及ぼす結晶構造、電荷移動、導電メカニズム、欠陥の影響とその機構を解明するため、ファイバの結晶方位に着目した物性計測、形状依存性を定量的に検討する。そして、これらの成果を基にして増感効果の発現機構にフィードバックさせる。
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