研究実績の概要 |
応力発光(mechanoluminescence,ML)は構造物の健全性診断など安全安心な社会を支える基幹技術への利用が強く期待されている。本研究は、ML性能が有する積層構造酸化物を突破口材料に用いて、発現機構や増強法を多角的な視点から究明し、画期的なML材料を創出することを目指している。具体的には、特異な積層酸化物に対し、フォトニクス機能に及ぼす結晶構造、電荷移動、欠陥の影響とその増感効果の発現機構を究明し、それをもとに画期的なフォトニクス新材料の設計・創出を目指している。 本年度は、(1)ミクロ・ナノファイバとMLシートのナノレベルの結合状態を解明して、ミクロ、メゾ、マクロのそれぞれ異なる階層での物性を多角的にアプローチし、応力発光に及ぼす結晶構造、電荷移動、欠陥の影響に関する機構モデルの構築に続き、(2)得られた理論に基づき、高感度ML特性を有する圧電材料LiNbO3:Pr3+を創出した。この材料は低ひずみに対しても優しいML特性を持ち、低ひずみのセンシング、破壊診断、エネルギー転換および光電特性を利用して多機能制御への応用を突き止めた。(3)低次元SAOファイバ状単結晶について、電気特性およびその温度・湿度依存性、UV出力パワーの依存性等を詳しく評価した。(4)得られた合成法と材料設計指針の有効性を検証し、ML特性を有する圧電材料は、高感度応力発光機能を有すること、電気・機械・光のエネルギー転換機能を有する斬新なフォトニクス機能を有することを突き止めた。 得られた成果は論文・学会等で多数発表し、その中で圧電性と高感度ML特性の両方を有する新規材料がAdvanced Materials誌に掲載された。
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