研究課題/領域番号 |
25249111
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
野田 優 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50312997)
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研究期間 (年度) |
2013-10-21 – 2017-03-31
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キーワード | ナノ界面 / 3次元化 / カーボンナノチューブ / シリコン / 高速製膜 / 蓄電応用 |
研究実績の概要 |
①シリコン系合金多孔質厚膜の急速蒸着およびポーラス電極の蓄電応用検討 SiとCuの共蒸着による組成傾斜構造を有すSi-Cu多孔質厚膜にて、Cuの原料添加率、蒸着時基板温度、後アニール処理を更に制御し、100サイクルで1250 mAh/gと現行のグラファイト負極の3-4倍の容量を実現した。既報と比べ、空隙率を約30%と低く抑え1956 mAh/cm3と高い体積容量密度を、緻密膜換算で3-4 umと厚く製膜し0.96 mAh/cm2と高い面積容量密度を実現した。活物質と集電体界面を更に制御すべく、カーボンナノチューブ(CNT)膜へCuを急速蒸着し、CNTが埋め込まれたCu箔を開発した。CNTが突出したCNT-Cu集電体に、Siを急速蒸着、平滑なCu箔と比べ負極サイクル特性の大きな向上を確認した。更に、Si急速蒸着時にArガス分圧を上げてSiナノ粒子を気相合成し、CNTと共分散後・ろ過する方法で、Si-CNT複合膜を作製した。Si粒径はArガス分圧により10-100 nm程度の範囲で制御し、50%前後の高い収率で得た。 ②長尺CNTの連続合成、良導性CNTスポンジの開発、およびソフト電極の蓄電応用検討 柔軟で80%程度の高い空隙率と大表面積を有す、CNTスポンジをマトリックスとしたソフト電極の開発を進めた。電気化学キャパシタ電極では、CNTと酸化グラフェン(GO)を共分散してろ過し、複合自立膜を作製した。この電極を熱アニール処理しGOを適度に還元することで、三極測定・5 mV/sにて214 F/gという高容量を得た。またCNTスポンジ膜を電極に電解析出する方法でMnO2-CNT複合膜を作製、三極測定・1 mV/sにて149 F/gの高容量を得た。既報の多くと異なり、数10 umという実用的に厚い電極で高容量が得られている。加えてLi-S二次電池に向け、CNTスポンジ膜への硫黄包含によりS-CNT正極を開発した。硫黄は現行の遷移金属酸化物の10倍の1675 mAh/gもの理論容量を有しているが、絶縁性で容量が出にくい。本手法により1300 mAh/gという理論容量に近い初期放電容量を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本課題では、Cu箔上の組成傾斜を有したSi系多孔質膜によるリチウム二次電池負極と、CNTスポンジに活物質を包含した電気化学キャパシタ電極から入り、最終年度にCNTスポンジをベースとしたリチウム二次電池の正負極まで取り組む計画であった。H26年度は本研究課題を希望する学生が多く配属され、最終年度に予定していた硫黄-CNT複合膜によるリチウム二次電池(Li-S電池)正極まで着手できた。加えて、蓄電デバイスに欠かせないCu箔に関して、バインダーを用いず、CNTが突き刺さった銅箔を急速蒸着法にて開発できた。蓄電デバイス中で大きな重量割合を占める金属箔集電体を軽量化し、かつ界面を三次元化できるこの集電体は、当初計画にはなかったが、本研究開発の途中で着想し、2件の特許出願にも繋がった。 申請額の2/3という限られた予算で、人件費と消耗品費でそのほとんどを使い切ってしまう状況が続いているが、グローブボックス等の必須設備を連携者に借用し、また技術面でも支援して頂くことで、計画以上のペースで進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は順調に立ち上がり、H25年度、H26年度ともに当初計画以上のペースで前倒し+αで進んでいる。今後も現状の進め方を維持し、計画以上の成果をあげたい。 ただ、予算は申請額の2/3と限られ、人件費と消耗品費でそのほとんどを使い切ってしまう状況が続いており、追加の可能性があればご検討頂きたい。
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