研究課題/領域番号 |
25249114
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
岩本 正和 中央大学, 公私立大学の部局等, 教授 (10108342)
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研究分担者 |
田中 大士 中央大学, 公私立大学の部局等, 助教 (00528002)
本田 正義 国立研究開発法人理化学研究所, その他部局等, 研究員 (70734078) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | プロピレン / エタノール / エチレン / 過酸化水素 / ブタジエン / アンモニア |
研究実績の概要 |
本年度は以下の三点について検討し、有用な成果を得ることができた。 (1)エチレンからプロピレンを合成する接触反応系の構築: 前年度までNiイオン担持シリカメゾ多孔体の触媒活性、発現機構、Niイオン状態について検討してきたが、今年度は金属酸化物が本反応に触媒作用を示すかどうかを検討した。第一遷移系列の金属を中心に触媒活性試験を行ったが、ピロピレン収率はいずれの場合も5%以下であった。SiO2-Al2O3等では比較的高い活性を与えたが、活性劣化が激しかった。 (2)バイオエタノールをプロピレンへ転換する触媒の開発: 我々は、バイオエタノールをプロピレンへ転換するETP反応について検討を進め、Sc/In2O3が最も高活性でプロピレン収率は60%超に達することを見出している。反応機構を詳細に検討し、まずエタノールのアセトアルデヒドへの脱水素がおこり、アセトアルデヒドが水(あるいは表面水酸基)で酸化され酢酸を生成、酢酸がケトニゼーション反応を起こし二酸化炭素を放出しながらアセトンを生成、アセトンは共存水素あるいは反応系に添加した水素によってイソプロパノールへ水素化され、さらにプロピレンへ脱水することを明らかにした。 (3)過酸化水素合成等を効率的にすすめる触媒系の開拓: 今年度はPd触媒へのPtの添加効果を検討した。PdにPtを極少量(Pt/Pd < 0.01)添加すると、水素の活性化能が10倍ほど向上し、全体の反応速度が顕著に向上すること、一方、過酸化水素の生成量はPd単独の約半分程度に減少することを明らかにした。水素と酸素の吸着ポテンシャル等をガウシャン法で計算し、Pt上での容易な水素活性化のため、全体の反応速度向上と生成H2O2の水素化分解が引き起こされることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バイオエタノールのプロピレン化反応の機構を明らかにできた。反応経路は前ページに記したように非常に複雑であったが、Sc/In2O3触媒では各ステップを高選択的に通過し、最終収率60%を達成できている。予想以上に良い触媒ができていることが明らかである。一方、エチレン→プロピレン反応の収率はNi-M41でも20%程度、他の金属酸化物系ではわずか数%にとどまっている。過酸化水素合成ではPd単独系の良さを再認識した。これらの諸点を勘案し、おおむね良好の判断とした。
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今後の研究の推進方策 |
エチレン反応は、今後の検討を中止し、他の反応に注力する。エタノールの反応では、酸化インジウム触媒の高活性化(焼成温度やSc担持量の影響を調べる。また、触媒寿命の検討も追加する)、エタノール→イソブテン反応の触媒開発を試みる。過酸化水素合成では、Pt系を添加してもH2O2生成活性が向上しなかったので、類似の水素活性化反応としてアンモニア合成の検討に転換する。
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