本年度は以下の二点を集中的に検討し、有用な成果を得ることができた。 (1)バイオエタノールをブタジエンへ転換する触媒の開発: 昨年度までの研究においてエタノールをプロピレンへ転換する触媒系を検討し、スカンジウム担持酸化インジウムが最良の触媒系であることを結論している。本年度は、タイヤ用ゴムの重要な合成原料であるブタジエンを高効率で生成する触媒系の開発を試みた。ブタジエン合成ではアセトアルデヒド経由ルートとエチレン経由ルートについて検討し、前者ではLa2O3-TiO2系が高い触媒活性を示すことを見出した。また、Znの担持により選択性や寿命を改善できた。反応はアルドール縮合を通って進んでいることを明らかにした。一方、後者のルートに活性な触媒は見出せなかった。Ni系触媒がエチレン中間体の二量化に活性を示すことを究明したが、生成したブテンの脱水素が困難なためブタジエンは生成しなかった。一部生成していたブタジエンはアセトアルデヒド中間体から生成したものであることを結論した。 (2)プラズマ触媒法アンモニア合成系の開拓: これまでの高温高圧の固体触媒アンモニア合成法と異なり、当研究室ではプラズマによる窒素の活性化を利用する常温常圧プラズマ触媒法の開発を試みている。昨年の研究によりウール状銅電極がこれまでのアンモニア合成に比べて格段に優れた結果を与えること、その合成効率は既存のプラズマ触媒法はもとよりFe系あるいはRu系の固体触媒法をも凌駕することを見出した。今年度は、種々の金属の触媒活性を検討し、金が最良の触媒として機能すること、その触媒序列は表面窒化物種の不安定性と相関していることを明らかにした。また、アンモニア分解、金属酸化物触媒についても検討し、有用な知見を得た。
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