研究実績の概要 |
本研究では、アスベスト結合ペプチドの立体構造をNMRにより解析し、アスベストとの相互作用を解明することを目的とする。本年度は、アスベストに結合し、かつ特異性がみられたペプチド(QREMLIADGIDPNELLNSLAAVKSGTKAKR:31アミノ酸)について、2次元NMRによる測定を行ない、立体構造について解析を行なった。まず、アミノ酸の帰属を行なった。各種のNMR測定(1H-13C HMBC、1H-13C HSQC、1H-1H COSY、1H-1H TOCSY、1H-1H NOESY)を行なうことで、各アミノ酸のCα、Cβ、C=O、Hα、NHの化学シフトを帰属した。次に、得られた化学シフト値を用いて2次構造の予測を行なった。タンパク質のCα、Cβ、C=O、Hαの化学シフトの実測値から、2次構造を推定するケミカルインデックス法が知られている。具体的には、ケミカルインデックス法をもとに開発されたδ2Dプログラム(Camilloni et al. Biochemistry 51, 2224-2231, 2012)に、各アミノ酸のCα、Cβ、C=O、Hα、NHの化学シフト値を入力し、計算を行なった。その結果、Helixやβ-sheetなどの明確な二次構造は見られなかった。しかし、NOESYスペクトルの7.6~9.0ppm領域における各アミノ酸のアミドプロトンの相互作用について解析を行なったところ、いくつかのアミノ酸において2つ以上のシグナルが観測された。そのため、Helixやβ-sheetなどの構造を持つ可能性は低いが、それ以外のなんらかの構造を持っている可能性が高いと考えられた。今後は、CYANAなどのソフトウェアを用いて詳細に立体構造解析を行なう予定である。また、アスベストを観察するための超小型の蛍光顕微鏡を3Dプリンターを用いて成型した。
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