研究実績の概要 |
本研究では、アスベスト結合ペプチドの立体構造をNMRにより解析し、アスベストとの相互作用を解明することを目的とする。これまでに、アスベスト結合ペプチド(QYREMLIADGIDPNELLNSLAAVKSGTKAKR:31アミノ酸)について、NMR測定(1H-13C HMBC、1H-1H NOESYなど)で得られたスペクトルデータをもとに、CYANAを用いて構造解析を行なってきた。本年度では、解析で得られたアスベスト結合ペプチドの構造と、角閃石アスベストの結晶構造モデルを用いて、両者の相互作用についてMD(Molecular dynamics)シミュレーションを行なった。 まず、アスベストの結晶構造モデルの構築を行なった。角閃石アスベストの表面は、イノケイ酸により構成されている。Crystallography Open Databaseから、イノケイ酸の結晶構造(COD ID: 1532023)を取得し、SciMAPSを用いて、結晶構造モデルを作製した。次に、アスベスト結合ペプチドについて、昨年度のCYANA解析によって得られた構造計算結果から3次元構造を構築した。上記の作製したイノケイ酸の結晶構造モデルとアスベスト結合ペプチドの3次元構造を用いて、MOE(Molecular Operating Environment, CCG社) によるMD解析を行なうことで、結合モデルのシミュレーションを行なった。力場としてはAMBERを用い、MD計算にはNAMDを用いて行なった。MD解析の結果、アスベスト結合ペプチドのC末端領域がイノケイ酸と相互作用していることが示唆された。このC末端領域はフレキシブルな構造を持つと考えられるため、アスベスト結合ペプチドとアスベスト表面との相互作用は、誘導適合で結合すると考えられた。
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