研究課題
基盤研究(A)
まず津波中での複雑な流れの中での船舶の衝突や転覆挙動手法開発に先立ち、東北北関東大震災における船舶の挙動にかかるベースデータの収集を行った。第一には鹿島港における津波来襲時の船舶の動的データをAIS(船舶自動識別装置)によるものを取得し解析を行った。あわせて、船舶衝突・転覆挙動を解析するために既往の計算手法を船舶の6自由度が表現できるように拡張した。次に津波来襲時を想定し浅水/岸壁影響を考慮したCFD(数値流体力学)計算手法についてタンカー船型を対象に、重合格子型CFD手法の精度を確認した。またノートパソコンによるCFD計算環境を整備した。またCFD計算結果結果可視化ソフトウエアの導入も行った。さらに海外協力機関であるIOWA大学によるCFDコード・CFDSHIP-IOWAのインストールを完了した。さらに同開発者である米国研究者を招聘.海技研・阪大・神戸大などでセミナーを実施し,CFD開発一般並びに本科研課題に適用する際の情報交換を実施した。また2011年東北地方太平洋沖地震津波による気仙沼湾における大型船舶の漂流・座礁位置分布の検証を行った。まず、宮城県気仙沼市周辺において津波流況を数値計算によって求め,浸水域の比較から良好な結果が得られている事が確認した。次に,現地調査,航空写真から気仙沼湾周辺で発生した漂流船舶の主要目を把握した上で漂流船舶の解析をおこない、船舶の漂着・座礁分布の傾向を分析し,本モデルの適用性を検討した。本モデルにより、実際に船舶の座礁が集中した位置を概ね再現することができていることが確認できたことから、船舶が漂流し座礁しやすい箇所の推定を行う事が可能であることを明らかにすることができた。
2: おおむね順調に進展している
津波流れにより船舶が漂流し、構造物に衝突した場合は想像を絶する破壊力となり甚大な被害につながる可能性があるが、このような津波中での転覆などの複雑な挙動を解析するために、既往の津波中での船舶挙動解析手法を6自由度の計算実施が可能となるよう拡張した。また船舶が水深が浅い岸壁付近で津波流れを受けると、極めて複雑な流れ場となりさらに船体の位置や津波の強さは刻々と変化しそれにより流れ場も刻々と変化する。このような状況での船体に作用する流体力の把握を可能とするためにCFD を活用して、岸壁と船舶が近い状態あるいは水深の浅い状態などの”制限水域”で船体に作用する流体力を把握するCFD計算環境が整った。また津波が防波堤を超えて陸地に侵入することが先の東北地震津波で確認されているが、今回整備を行った船舶を考慮した津波遡上計算にて大型船舶の漂流問題の再現に成功することができた。以上のような観点から、本研究が概ね順調に進展していると判断している。
(1) 検証用水槽試験実施:今回開発する「津波・船舶 複合連鎖系解析システム」では船体に作用する流体力は、水深が浅く船底と海底の距離、岸壁と船舶の距離が近い状態や、堤防や入り組んだ岸壁など複雑な形状の構造物付近でのCFD を活用した流体力の把握および超流の計算コード開発を行う。この計算精度の検証のため、既存の実験水槽を利用し岸壁を模擬して実験を行う。(2) 船舶複合遡上津波計算コード検証・最適化:平成25 年度作成の船舶複合遡上津波計算コードについて、さらに実海域データや実験結果と比較し精度の検証を行う。また開発されたコードの限界把握問題点抽出を行い必要なコードの補正を行う。さらに膨大なデータ処理し蓄積するので、それを円滑に再使用できるような計算科学の視点での取り扱いにも留意する。(3) 制限水域での船体流体力CFD コードの検証:水深が浅く岸壁付近での複雑な津波流れの中で船体に作用する力を把握するCFD コードについて、平成26 年度実施する水槽試験結果とつき合わせ精度の点検・検証と改善を行う。(4) 津波による船舶衝突・転覆モデル最適化・課題抽出:陸域にまで遡上している複雑な津波流れのなかで、岸壁付近に存在する船舶の挙動について、衝突や転覆に至るまでの極限状況を再現できる津波による船舶衝突・転覆モデルについて、前述の水槽試験結果や東日本大震災で観測されている船舶の挙動分析も合わせて、総合的に精度の検証を行う。この検証作業を通じて、精度向上に向けた必要な改良作業を行うとともに、このコードの計算限界についても把握する。(5) 公表活動:開発されたモデルを用い、中央防災会議により新たな想定が公表された、南海・東南海地震を例示的にとらえ、様々なケースについて試行を行い、その結果を論文、ワークショップ、Web などで行い成果を広く示す。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 4件)
Proceedings of OMAE2013
巻: 5 ページ: -
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