研究課題/領域番号 |
25249131
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
石田 毅 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10232307)
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研究分担者 |
直井 誠 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10734618)
陳 友晴 京都大学, エネルギー科学研究科, 助教 (80293926)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 二酸化炭素排出削減 / 資源開発工学 / 水圧破砕 / 岩盤 / 破壊 / Acoustic Emission / 微小地震 / 地殻・マントル物質 |
研究実績の概要 |
地球温暖化の速効的対策であるCO2(二酸化炭素)地中貯留では,大量のCO2を岩盤内に効率よく圧入する必要がある.CO2を実際に圧入する地下深部ではその温度圧力条件からCO2は水の1/100~1/10の小さな粘性を有する超臨界状態となる.このような粘性の小さい流体の圧入が微小地震の発生や遮蔽性を期待するキャップロックの安定性に悪影響を与えないことを確認する必要がある.そこで本研究では研究代表者らのこれまでの室内CO2圧入実験の成果に基づき,自然状態の現地の岩盤を用いてCO2の圧入実験を行い,極めて小さい地震であるAE(Acoustic Emission:岩盤の微小破壊に伴う弾性波動)を観測して圧入によって生じる亀裂の特徴を調べ岩盤の安定性への影響を評価することを目的としている. H26年度は関西電力黒部第3発電所の高熱隧道の高温花崗岩を利用して,超臨界CO2の圧入実験を実施した.初めての現場実験のため,種々のトラブルが生じたが,水と超臨界CO2による水圧破砕に成功した.H27年度は,当初計画通りJAEA(日本原子力研究開発機構)瑞浪超深地層研究所の常温の横坑で液体CO2の圧入実験を行ったが,セメントパッカーからの漏えいのため,特にCO2の実験で失敗が多く生じた.これは岩盤温度が低いためセメントが実験に必要な短時間では固まりにくいこと,循環水を使用したため微細な粒子がセメントと金属の接触部に沈殿しこの箇所で漏えいが生じやすかったことが原因と思われる.一昨年度の黒部では岩盤温度が高く,清浄な豊富な洗浄水を使用できたことからこのような問題の発生が少なかったこと,また一昨年度の黒部での実験データの解析を進めたところ,実験データが不足しておりこれを補うことで当初の研究目的を満足する有用な知見が得られる見込みが強いことがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H26年度に関西電力黒部第3発電所の高熱隧道で実施した超臨界CO2の圧入実験では,水による破砕は岩盤中の既存亀裂にそって生じたのに対し,CO2による破砕では健全な岩盤中に新たな亀裂が造成されたため,水とCO2で岩盤条件が異なり,研究目的である破砕流体の違いによる造成亀裂の特徴の違いを検討することができなかった.また水圧破砕の亀裂発生時には極めて多数のAEが連続して発生し,AE測定に欠測が生じることがわかった. AE測定の欠測は測定器のデータ転送速度が不十分なためであることがわかったので,H27年度は,ハードディスクをSDDに交換してデータ転送速度を高速にした.また従来はあるレベル以上の振幅の大きなAEが発生するたびにAE波形の測定を起動するトリガー方式であったのを,ずべてのAE波形を連続的に測定する方式に切り替え,AE測定に全く欠測が生じないより高度な測定システムを構築した.その結果,従来AEの発生が多く測定が困難であった水圧破砕亀裂発生時のAEを,H27年度の瑞浪地点での水による破砕実験ではすべて測定することができ,水圧破砕亀裂の初生時には引張型のAEが,その後はせん断型のAEが得られることがわかり,水圧破砕メカニズムに関する新たな知見が得られた.従って,黒部で一昨年度と同じ条件でCO2の漏えいなく実験ができれば,水とCO2による造成亀裂の特徴の違いを検討できるとともに,水圧破砕に関する新たな知見も得られ,当初の研究目的を十分に達成することができると思われる.
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今後の研究の推進方策 |
H26年度は関西電力黒部第3発電所の高熱隧道において高温の花崗岩を利用して,超臨界CO2の圧入実験を実施し,水と超臨界CO2による水圧破砕に成功した.しかし,初めての現場実験のため種々のトラブルが生じ,研究目的である破砕流体の違いによる造成亀裂の特徴の違いを検討することができなかった.一方,H27年度は,当初計画通りJAEA(日本原子力研究開発機構)瑞浪超深地層研究所の常温の横坑で液体CO2の圧入実験を行ったが,セメントパッカーからの漏えいのため,特にCO2の実験で失敗が多く生じた.セメントパッカーからのCO2の漏えいは,「研究実績の概要」のところで述べたように,H26年度の黒部ではあまり生じておらず現場環境の違いによるものと思われるため,黒部で実施すればこの問題は解決される可能性が高い.また一昨年度の黒部での実験データの解析を進めたところ,実験データが不足しておりこれを補うことで当初の研究目的を満足する有用な知見が得られる見込みが強いことがわかった.そこで当初計画では最終年度のH28年度に釧路コールマイン坑内の頁岩層で実験を行う予定でいたが,これを変更し,再度黒部地点で実験を行う予定である. H26年度の黒部実験では,横坑の下盤に直径86mm長さ10mのボーリング孔を掘削し,この孔内でCO2と水による圧入実験を行った.またこの圧入孔を正方形に取り囲む形で約1m離れた位置に4本の直径66mmのボーリング孔を掘削してセンサーを設置し,圧入に伴って発生するAEを観測し,その震源分布から造成された亀裂と破壊メカニズムの特徴を明らかにした.本年度はこれらの圧入孔をさらに追加掘削して一昨年度より深部で追加実験を行う予定である.
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