研究課題
地球温暖化の速効的対策であるCO2(二酸化炭素)地中貯留では,大量のCO2を岩盤内に圧入する必要がある.CO2を実際に圧入する地下深部ではその温度圧力条件からCO2は水の1/100~1/10の小さな粘度を有する超臨界状態となる.このような粘度の小さい流体の圧入が自然地震の誘発や遮蔽性を期待するキャップロックの安定性に悪影響を与えないことを確認する必要がある.そこで本研究では,研究代表者らのこれまでの室内CO2圧入実験の成果に基づき,自然状態の現地の岩盤を用いてCO2の圧入実験を行い,極めて小さい地震であるAE(Acoustic Emission:岩盤の微小破壊に伴う弾性波動)を観測して圧入によって生じる亀裂の特徴を調べることを目的とした.H26年度は黒部渓谷の高温花崗岩を利用して超臨界CO2の圧入実験を実施し,H27年度は日本原子力研究開発機構瑞浪超深地層研究所の常温の花崗岩で液体CO2の圧入実験を行った.一昨年度の黒部での実験データの解析を進めたところデータが不足しており,これを補うことで当初の研究目的を達成できる見込みが強いことがわかった.そこで.H28年度は一昨年度(H26年度)に続き黒部渓谷で実験を行い,超臨界CO2と水で2回ずつ信頼できる新たなデータを得ることができた.その結果,超臨界CO2の圧入では水の圧入に比べてAEの震源分布が広く分布することがわかった.しかし超臨界CO2の圧入では亀裂造成後時間が経過すると亀裂閉合によると思われるAEが観測された.このようなAEは火山性地震でも観測されていることから岩盤の破壊ではなくガス抜けに伴う亀裂閉合よるものと思われ,このようなAEであれば例えAEの震源分布が広がっても自然地震を誘発する心配は少ないものと思われた.
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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J. Geophys. Res. Solid Earth
巻: 121 ページ: 8080-8098
10.1002/2016JB013365
土木技術
巻: 71巻6号 ページ: 31-36