研究課題
基盤研究(A)
大型水素負イオン源において、正イオンと負イオンのみからなる高密度のイオン性プラズマを生成して、負イオン引出領域の負イオン密度、電子密度、電位分布等の基本的性質を調べるために、各種計測手法の開発と整備を行った。負イオンが生成される電極表面に対して、垂直方向及び平行方向の水素負イオン密度の分布測定が可能なように、キャビティー・リングダウン法(CRD)による測定系を整備した。また、発光分光法(OES)を用いたHα光の2次元イメージング計測による負イオン密度の時間的変化の測定手法を開発し、可視および赤外領域の分光計測系を整備して、電極表面近傍における水素負イオンの挙動の可視化に成功した。その結果、負イオンを引き出す際にプラズマ中の負イオン密度が減少する現象が、電極表面から20mmを超える範囲で観測され、負イオンが引出孔へ輸送される構造が明らかとなった。一方、電子密度の測定に対して、磁場の影響や負イオンの影響を受けないミリ波干渉計を用いた電子密度計測システムを設計・製作した。電極面に平行な視線で高分解能位相計を製作し、また、高電位部へミリ波を伝送するための誘電体導波管も整備して、負イオン引き出しに伴う動的な変化の測定も可能とした。同じく磁場の影響を受けない表面波プローブによる電子密度測定系も整備した。計測系の整備に並行して、プラズマ密度とプラズマ電位の空間分布を可動式の静電単針プローブを用いて計測した。その結果、負イオン引き出し時に減少するプラズマ中の負イオンの電荷密度を補償するために、電子が上流からイオン性プラズマに侵入することを見出し、その定量的評価を行った。また、負イオンはセシウム(Cs)が吸着した低仕事関数の電極表面で生成されるため、放電条件やCs導入条件に対する負イオン生成の依存性を明確にするため、可視レーザー光を用いた電極表面の仕事関数の測定系を整備した。
2: おおむね順調に進展している
1年目は、負イオン密度、電子密度、電位分布等の基本的性質を調べるための各種計測手法の開発と整備を予定通り行うことができた。Hα光の2次元イメージング計測による負イオン密度の時間的変化の測定から、負イオンの引出孔への輸送を観測するなど、新たな知見も得られている。また、静電単針プローブを用いた計測により、イオン性プラズマ中の電子のダイナミックな輸送も観測している。ミリ波干渉計及び表面波プローブによる電子密度の測定系および可視レーザー光による仕事関数の測定系も整備が終わり、これから測定が開始されるため、各種計測手法と組み合わせて、相互に関連した詳細な測定が期待できる。また、実験結果のモデル化へ向けて、シミュレーション研究とコード開発に関する打合せをイタリア及びフランスの研究グループと開始している。これらのことから、本研究課題は概ね順調に進展している。
これまでに開発・整備した計測手法を用いて、高密度イオン性プラズマの負イオン密度、電子密度、電位分布等の基本的性質を詳細に調べて、イオン性プラズマ中の各種粒子の輸送、負イオン引き出し時のプラズマ界面の構造等を解明する。キャビティー・リングダウン法(CRD)による負イオン密度分布の絶対値測定とHα光の2次元イメージング計測による負イオン密度の時間的変化測定を組み合わせて、負イオン引き出しに伴うイオン性プラズマ中の負イオン輸送を解明する。一方、ビーム引き出しに伴うイオン性プラズマへの電界浸透の変化は、電子による遮へいが大きな効果を持っていることが明らかになりつつある。このため、ビーム引き出し前後のミリ波干渉計による電子密度の時間的変化および4芯静電プローブを用いた電子密度の空間的変化を計測し、イオン性プラズマ中の電子の輸送を解明する。並行して、負イオンと電子の相互に関連する輸送を調べるため、光脱離(フォト・デタッチメント)法(PD)による測定系の整備と計測を進めるプラズマ中のCs密度測定と負イオン生成電極表面の仕事関数測定を行い、イオン性プラズマ特性に大きな影響を及ぼしている高密度負イオン生成条件を調べる。得られた実験結果を基に、研究協力関係にあるイタリア及びフランスの研究グループとシミュレーション・コード開発を進め、実験とシミュレーションとのベンチマークにより、イオン性プラズマ中の荷電粒子輸送および引出界面構造のモデル化を行う。それらにより負イオン引き出し機構を解明して、高密度負イオンの生成と引き出しの最適化による負イオンビームの大電流化を図る。
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