研究課題/領域番号 |
25249135
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研究機関 | 国立研究開発法人放射線医学総合研究所 |
研究代表者 |
坂本 慶司 国立研究開発法人放射線医学総合研究所, 六ヶ所核融合研究所 核融合炉材料研究開発部, 部長 (90343904)
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研究分担者 |
假家 強 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (30451678)
小田 靖久 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 核融合研究開発部門 那珂核融合研究所, 研究職 (60512209)
高橋 幸司 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 核融合研究開発部門 那珂核融合研究所, 研究主幹 (70354644)
南 龍太郎 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (70370476)
今井 剛 筑波大学, 数理物質系, 教授 (80354637)
小林 貴之 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 核融合研究開発部門 那珂核融合研究所, 研究職 (10465974)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | テラヘルツジャイロトロン / 300GHz / TE32,18モード / 500kW |
研究実績の概要 |
テラヘルツジャイロトロンの発進特性の研究を進めた。前年度までの研究で、周波数300GHz(0.3テラヘルツ)で、高次モードTE32,18モードにおいて目的である出力500kWの発進を実証した。今回広いパラメータ範囲でその発進特性を研究した。空洞共振器の磁場をスキャンすることにより発振モードを制御するとともに、電子銃磁場を制御し、電子ビーム位置とピッチファクタを最適化することにより、発振出力と効率の最大化を図った。電力測定は、ジャイロトロン出力窓外部に取り付けた、炭化ケイ素(SiC)をRF吸収体としたダミーロードの冷却水温度上昇から同定した。周波数測定は、スペクトルアナライザーおよびハーモニックミキサーを用いたヘテロダイン測定によって同定した。また、出力窓上に感熱紙を置くことにより、出力モードパターンを測定した。出力窓は300GHzで反射率が0%となるよう設計されている。実験の結果、目的のTE32,18モードは観測されたものの、より広い範囲で競合のTE30,19モードが観測された。これは、TE30,19モードは窓で23%のRF電力が反射されるため、共振器と窓の間でRFが閉じ込められた結果、共振器におけるQ値が上昇し、より強い電子ビームとTE30,19モードの相互作用が生じ、TE32,12モードの発振が抑制されたものと考えられる。そこで、出力窓上にSiO2製のディスクを乗せた。これにより、逆に競合モードTE30,19の反射が2%に抑えられ、目的モードの反射が23%となる。この結果、目的モードの発振領域が大きく拡大した。これまでに得られた各モードの最大電力は、299.84GHz(TE32,18)で522kW、295.65GHz(TE31,18)で542kW、301.8GHz (TE30,19)で528kW であり、20%を超える発振効率が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた空胴共振器における共鳴磁場と電子ビーム位置をパラメータとした発振マップを取得した。モード間の競合は確認されたが、それぞれのモードで単独発振を維持していることを実証した。複数のモードで出力500kWを達成し、TE32,18モードなどの高次モードを発振モードとしたジャイロトロンの、大電力テラヘルツ源としての実用化に見通しを得た。
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今後の研究の推進方策 |
今回の研究で、出力窓にSiO2ディスクを置くことにより、発振領域の大きな変化が見られた。これは、出力窓が軸と垂直であるために、反射波が同じモードを維持して共振器に戻り、さらに共振器で反射される結果、出力窓と共振器の間でこのモードが補足され、共振器のQ値が変化し、発振に影響を与えたものと考えられる。そこで、今後はこの出力窓からの反射波の影響を抑えた実験を行う。そのために、反射窓を傾ける機構を設けて反射波のモードを変化させ、特定モードが閉じ込められる現象を避ける実験を行う。これによりジャイロトロン共振器のQ値が変化しない状況を作り、本来のQ値を持つ共振器条件における発振特性の研究を行う予定である。
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