研究課題/領域番号 |
25249139
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
和田 一実 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30376511)
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研究分担者 |
寒川 誠二 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (30323108)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 薄膜シリコン太陽電池 / 高効率化 / 面内光ガイディング / ナノシリコン球 / 共鳴散乱現象 / シリコン量子細線 / ゲルマニウム量子細線 / バイオテンプレート極限加工 |
研究概要 |
1. 光ナノ構造の制御 量子ナノ構造太陽電池の構造設計より、量子ナノ構造を5層積層することにより、効率50%を超えるシリコン系太陽電池が得られることを理論的に示した。本研究では、多接合化の第一歩として量子ナノ構造太陽電池と薄膜シリコン太陽電池との二層積層型の実現をねらうこととした。 接合部に挿入する中間層の最適化を進め、上層の量子ナノ構造制御太陽電池の厚さが60nm以上の場合には光ナノ構造を制御した中間層 は不要となり、量子ナノ構造太陽電池層と下層の薄膜シリコン太陽電池層との絶縁分離をする層として1nm厚のSiO2があればよいことを示した。60nmの量子ナノ構造制御太陽電池の可制御性を明確化するため、量子ナノ構造にはドブロイ波長の長いGeを採用することとした。下層の薄膜シリコン太陽電池には面内光ガイド構造として、シリコンナノ球を分散することにより共鳴散乱効果が現出することを理論的に解明した。これによりこれまで空洞を導入した面内光ガイド層を不要とすることができる。 2. 量子ナノ構造の制御 本年度はバイオテンプレートを用いた中性粒子ビームエッチングによるSi量子細線の作製を行った。これまでに寒川グループで開発した技術を発展させ、エッチング時における中性粒子ビームエネルギーを最適化することでアスペクト比5以上(直径18nm、高さ120nm)の細線形成に成功している。また、Ge量子細線形成にも新たに研究を展開した。これまでに基板洗浄プロセス最適化、マスクとなる鉄コアを得るために必要なタンパク質除去プロセスの低温化を検討した。特にタンパク質除去プロセスでは、酸素雰囲気下における真空中アニール処理技術を新たに開発し、従来(550℃)よりも格段に低温である280℃でのタンパク質除去に成功した。その結果、Ge表面の不安定性に影響を受けることなくこれまでにアスペクト比9程度のGe量子細線形成に成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
量子細線太陽電池の最適化(申請書中研究計画・方法の(B)) 達成度:バイオテンプレートを用いてアスペクト比5のSi量子細線形成に成功している。また新たな展開としてGe量子細線形成にも成功している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は量子細線太陽電池の最適化を目的にバイオテンプレートを用い中性粒子ビームエッチングによる検討を行った。本研究で実現する太陽電池に使用するために、光マネージメントの観点から必要とされる量子細線のアスペクト比を10程度と想定し、直径7nmの鉄コアを有するフェリチンをマスクとしたエッチングを行った。ビームエネルギーの最適化の結果、これまでにアスペクト比5以上の細線形成に成功している。従来高アスペクト比のナノ細線をトップダウンで作製することは不可能であったが、本研究では中性粒子ビームエッチングを適用することで実現することができた。工業的適用性の高いトップダウンプロセスで量子細線作製が可能であることを示した意義は大きい。今後はフェリチンよりも小さなタンパク質であるリステリアフェリチン(直径4.5nmの鉄コア)を用いたエッチングを検討する。マスクサイズのダウンスケールが見込まれるため、エッチング条件の最適化によりアスペクト比10程度の細線化が可能であると考える。また、必要に応じて、エッチング後の表面処理を検討する。さらに、本年度新たに展開を図ったGeについても細線作製技術の開発を進める。
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