研究課題/領域番号 |
25249140
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
直井 勝彦 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70192664)
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研究分担者 |
宮本 淳一 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30450662)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | キャパシタ / エネルギー貯蔵 / ナノ材料 |
研究概要 |
平成25年度は次世代ハイブリッドキャパシタ用正・負極電極材料の作製に取り組んだ。 負極材料としてスピネル型チタン酸リチウム(Li4Ti5O12;LTO)の理論容量175 mAh/gを超えるチタン酸水素(H2Ti12O25:HTO,理論容量300 mAh/g)及びブロンズ型二酸化チタン(TiO2(B),理論容量335 mAh/g)に注目し、当研究室独自の超遠心ナノハイブリッド技術(UC処理)を利用してカーボンナノファイバー(CNF)との複合体の作製方法確立を目的とした。HTO/CNF複合体はチタン酸カリウム/CNF前駆体からイオン交換による手法が有望であったがKTOの作製時に様々な不純物相が生じ、単相のHTO/CNF複合体を得ることが困難であったた。そこでTiO2(B)/CNF複合体の作製に注力した。検討の結果水溶性4核チタン錯体を利用してUC処理と水熱合成の組み合わせにより、ナノ粒子サイズのTiO2(B)をCNF上に高分散担持する手法を確立した。得られた複合体の電気化学特性は1C(=1時間放電)で243 mAh/g、300C(=12秒放電)の高レートにおいても151 mAh/gを発現し、LTO/CNF複合体を上回る性能を示した。 また、正極材料ではオリビン型リン酸マンガン・鉄リチウム(LFMP)/CNF複合体及びオリビン型リン酸バナジウムリチウム(LVP)/SGCNT複合体の作製に着手した。LFMP/CNFについては鉄とマンガンが固溶化した単相の複合体の作製に成功し、10C以上のレートで既報の報告より高い容量を発現したが、キャパシタ正極として一般的な活性炭と同等の性能であり、今後更に高出力化を図る必要がある。LVP/SGCNT複合体については様々な検討の結果、UC処理により酸化バナジウム(V2O3)/SGCNT複合体を前駆体として合成し、この前駆体にリチウム源を添加して再度UC処理及び焼成過程を経る手法で複合体の合成手法を確立した。この複合体の電気化学特性はLMFP/CNFを超える発現容量を示すことがわかった。現在は実用的観点から担持炭素材料をCNFに変更した複合体の合成手法の確立を目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記研究実施概要に示した通り、ナノハイブリッドキャパシタ用負極材料としてTiO2(B)/CNFが非常に優れた電気化学特性を有することを明らかにし、LTO/CNF複合体の代替材料としてだけではなく、これまでTiO2(B)では報告例のないリチウムイオン電池の負極材料としてもグラファイトやLTOの代替として有望であることが分かった。また、TiO2(B)については77Kの窒素吸着等温線を用いた細孔分布解析から担持ナノカーボンへのナノ結晶性TiO2(B)の分散度と発現容量の関係について関連性があることを見出し、その定量化を示すことが可能になりつつある。したがって、次世代ハイブリッドキャパシタ負極材料として一定の指針示すことができたと考えられる。 また、正極材料についてもLMFP/CNF複合体やLVP/ナノカーボン材料複合体の作製について一年前倒しで合成に着手し、UC処理と焼成によりそれぞれ不純物を含まずに複合体を合成可能であることを示すことができた。今後電気化学特性の向上を目指す必要があるものの現状では順調に研究が進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
負極材料候補であるTiO2(B)/CNF複合体については電気化学的に優れた特性を示したが示したがキャパシタとして必要な充放電サイクル特性について十分ではないことが課題として残存している。今年度は本複合体のサイクル特性向上のためサイクル劣化後の電極の各種分光や電子顕微鏡を利用したミクロ構造解析により、劣化原因を究明し、例として充放電による構造変化対策として異種金属ドープによる構造安定化を試みる。 正極材料の方は、まずLMFP/CNF複合体についてLMFPの合成手法を原材料の段階より見直し、均一なナノ結晶性LMFPをCNF上に高分散担持することに注力する。これにより出力特性・発現容量の向上が期待できる。次にLVP/ナノカーボン材料複合体については担持ナノカーボン材料をSGCNTからCNFに変更し、まずは一般に充放電可逆性に優れることが分かっている2電子反応領域の電位範囲で300Cで活性炭の2倍以上の容量発現を視野に入れる。その手法として異種金属ドープによる充放電中の結晶構造安定化を試みる。更に3電子反応領域まで電位範囲を上げ、その電気化学特性について検討を行う。
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