研究課題
リチウムイオン二次電池の高性能化、新規高性能蓄電池を実現するためには、デバイス内で逐次的に進行する、空間・時間的に広範囲にわたる階層反応を理解する必要がある。リチウムイオン二次電池の反応では非平衡状態で進行するため、従来の蓄電池研究で使用されてきた解体分析では、反応速度の支配因子や劣化機構を的確に把握できないのが現状である。本研究では、これまで未解明な階層構造ごとの相界面動的挙動を解明して、蓄電デバイス設計のための基礎学理を構築する。特に本年度の研究では活物質の相変化挙動の動的挙動解析と温度依存性について注力し、相反応の律速因子の推定と高性能活物質の設計指針構築を図った。これまでに高速充放電反応時にはLiFePO4(LFP)-FePO4(FP)の二相反応中に準安定な中間相が生成することを見いだしている。本年度は中間相が熱力学的に安定して存在する230℃での充放電挙動を解析した。この結果、2つの電位平坦部を有する充放電曲線が得られ,中間相(LxFP相)を介した2種類の二相共存反応が進行していることを示した。また、レート特性の結果から、LFP相-LxFP相共存反応よりLxFP相-FP相共存反応の方が速度論的に有利であることを示した。充電中のoperando XRD測定により230℃におけるLFPの相変化挙動を直接観察した。LFP相-LxFP相共存反応は典型的な二相共存反応で進行するのに対して、LxFP相-FP相共存反応では二相共存反応と同時にLxFP相の固溶反応が進行することを示した。この相変化挙動の違いが中間相を通した高速充放電の起源であることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
全体の研究計画の中で、電極反応の動的挙動解析をするための方法論を開拓し、それを利用した高出力化の指針を見いだした。本手法はマルチスケールな蓄電池反応解析のための基盤技術として重要であり、翌年度以降の研究を加速できる。
本年度までに構築した合剤電極のマクロな反応分布解析手法およびイオン・電子伝導率測定手法を合わせて、合剤電極の低温下における出力特性の挙動を解析する。また、これと同時に活物質の非平衡挙動について、低温状態を中心に解析する。広い温度範囲で高出力可能なリチウムイオン二次電池の高性能化へ向けた指針構築を目指す。
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