研究課題
本研究は、発達過程で聴覚を獲得し、音情報の特徴抽出をする神経基盤に関して、生理学的・分子生物学的研究を行うことを目的とし、以下の成果を得た。1.ゼブラフィッシュ仔魚が刺激音から素早く逃げる逃避運動は、後脳に左右一対存在するマウスナー細胞(M細胞)によって駆動されるが、逃避運動を起こす閾値以下の音刺激を繰り返し与えると、刺激音に対するM細胞の活動が抑圧され、逃避運動が起こらなくなることを、M細胞のカルシウム・イメージングと逃避運動の同時計測から見出した。興味深いことに抑圧の持続時間はキンギョ成魚と大きく異なり、可塑性の発達過程を示唆した。これらの成果を国際誌に発表した。2.M細胞が音刺激のオンセットに単一の活動電位を出す性質は、M細胞と形態学的に相同な網様体脊髄路ニューロンが連続発火するのと大きく異っているが、その性質は主にM細胞に特有に発現する二種類の低閾値型チャネルで説明される。これまでに見出されたKv1.1チャネルに加えて、Kv7.4チャネルが重要な働きをすることを、薬理学的・分子生物学的実験と数理モデルで証明した。数理モデルではNEURONシミュレーターを用いて、相同ニューロンのもつ連続発火特性にKv1.1とその補助分子Kvb2およびKv7.4チャネルをある条件で加えるだけで、M細胞の単発発火特性の獲得を説明できることを示した。この結果をまとめて論文を作成し、投稿中である。3.M細胞の発火特性は局所回路によっても強く制御され、なかでもM細胞自身を抑制する反回性抑制回路と反対側のM細胞を抑制する相反性抑制回路が重要である。後脳分節に繰り返される網様体脊髄路ニューロン群の尾側に並ぶT型網様体ニューロン群のうち、吻側の二対が2つの抑制回路の介在ニューロンとして重要であることを、ニューロンの破壊効果、ダブル・ホールセル記録およびカルシウム・イメージングで見出した。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 5件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 10件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 4件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
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