研究課題
基盤研究(A)
本研究課題では、さまざまなウイルスベクターを利用した先端的神経ネットワーク解析システムを確立し、それらを駆使して、霊長類の大脳基底核を巡る神経ネットワークの構造と機能を明らかにすることを目的としている。平成25年度は、外来遺伝子の高発現化など、独自に開発、改良をおこなった狂犬病ウイルス固定株をベースとするウイルスベクターに、4種類の蛍光タンパク質遺伝子を組み込んで多重逆行性越シナプス的トレーシングのための狂犬病ウイルスベクターを作製し、前頭前野の4領野への注入実験を実施した。その結果、このベクターは親株であるCVS26株と同等の逆行性感染伝播効率を保持しており、1シナプスにつきおよそ24時間で移動し、注入後72時間ではベクターが注入部位からシナプスを3つ介する3次ニューロン(大脳皮質─大脳基底核ループ回路では線条体の投射細胞)まで到達していることが確認され、かつ大脳基底核のさまざまな領域において蛍光タンパク質による多重ラベルが発見された。また、線条体の特定の部位に入力するニューロン群の軸索投射を解析するためのシステムとして、研究代表者らが近年開発に成功した逆行性レンチウイルスベクターとアデノ随伴ウイルスベクター、およびTet-On発現誘導系を利用した経路選択的細胞可視化法に改良を加え、発現量の増加とリーク発現の低下に成功した。さらに、線条体の特定の部位に入力するニューロン群の入出力解析法の開発としては、同法に必須なベクターである感染伝播能欠損型(G遺伝子欠損型)狂犬病ウイルスベクターにゲノム配列の改変をおこない、従来型と比べて外来遺伝子発現能を向上させ、かつ細胞毒性を低減した改良型ベクターを開発することに成功した。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度の研究実施計画に記載した、multi-color狂犬病ウイルスベクターによる前頭葉皮質への多シナプス性出力様式に基づく線条体の機能マッピングに関しては、4種類の蛍光タンパク質を発現する改変型狂犬病ウイルスベクターを利用した前頭葉皮質からの多重逆行性越シナプス的トレーシングに成功し、現在、大脳基底核各領域におけるラベルされたニューロンの分布様式を解析中である。また、線条体の特定の部位に入力するニューロン群の軸索投射解析法の開発、線条体の特定の部位に入力するニューロン群の入出力解析法の開発に関しても、同手法に必要なウイルスベクターの開発・改良に成功しており、研究が順調に進展していると考えられるため。
研究計画は当初の予定どおり順調に進展していると考えられるため、平成25年度に開発、改良に成功したウイルスベクターシステムを利用し、線条体の特定の部位に入力するニューロン群の入出力解析法を霊長類において確立し、線条体の特定の部位に入力する大脳皮質、視床、黒質の入出力解析をおこない、線条体入力系の全体像を明らかにする。また、線条体の特定の部位に入力する大脳皮質、視床、黒質からの神経路への機能介入による行動学的および電気生理学的解析をおこなうため、リーク発現を最小化した神経路選択的発現制御システムを利用して、ニューロトキシン遺伝子やオプシン遺伝子の発現による特定神経路への機能介入を実現し、行動学的解析や課題実行時の電気生理学的解析をおこなう。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 4件) 備考 (1件)
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http://www.pri.kyoto-u.ac.jp/sections/systems_neuroscience/index.html