研究課題/領域番号 |
25250005
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
川口 泰雄 生理学研究所, 基盤神経科学研究領域, 教授 (40169694)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 前頭皮質 / 視床 / 振動現象 / 錐体細胞 / スパイン |
研究実績の概要 |
前頭皮質ニューロンは徐波振動のUp状態で発火する。その発火様式を解析したところ、Up内で発火位相が、錐体細胞の所属層やサブタイプによって異なることが分かった。さらに、Up状態の開始には、皮質錐体細胞だけでなく、皮質へ投射する視床細胞が深く関与することも見つけた。前頭皮質(2次運動野)5 層の下部(5b層)には、同側の視床と橋核へ投射する錐体細胞(corticopontine細胞、CPn細胞)と、対側線条体へ投射する錐体細胞(crossed-corticostriatal細胞、CCS細胞)があり、Up内の発火時期選択性が異なっていた。前頭皮質(2次運動野)と視床のシナプス相互作用によって起きる振動現象を理解するために、5a層錐体細胞サブタイプごとに、視床入力と錐体細胞入力のシナプス結合様式を比較解析した。錐体細胞サブタイプの樹状突起は、投射先からの逆行性蛍光標識と蛍光色素の細胞内注入によって標識した。視床と錐体細胞からの錐体細胞スパイン入力は、小胞性グルタミン酸トランスポーターの発現の違いで同定した。グルタミン酸作動性入力密度が、CPn細胞では基底樹状突起全体にわたって比較的一定であるのに対して、CCS細胞では近位部から遠位部にいくのにしたがって減少していた。一方、グルタミン酸作動性入力の中での視床入力の割合は、CPn細胞では樹状突起全体にわたって一定なのに対して、CCS細胞では遠位にいくにつれて上昇していた。皮質局所興奮結合はCCS細胞からCPn細胞への一方向性であり、CPn細胞どうしは促通型相互結合を発達させている。5層錐体細胞の局所結合特性と視床入力の樹状突起部位選択性が、前頭皮質・視床ループの機能の回路基盤として重要だと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに明らかにした、徐波振動中の視床細胞や5層錐体細胞のサブタイプごとの発火様式の違いを理解するために、視床皮質間投射系のシナプス結合様式を明らかにする研究を発展させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
前頭皮質のニューロンサブタイプ選択的活動様式を理解するためには、外部入力としては視床入力だけでなく皮質領野間入力の、局所結合としては錐体細胞間結合だけでなく興奮・抑制細胞間結合を定量的に解析していきたい。
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