研究課題/領域番号 |
25250011
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
林 純一 筑波大学, 生命環境系, 教授 (60142113)
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研究分担者 |
米川 博通 公益財団法人東京都医学総合研究所, 遺伝子改変動物室, 特任研究員 (30142110)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / mtDNA / 老化 / 自然免疫 / がん |
研究実績の概要 |
<ミトコンドリアゲノムの遺伝子産物はすべて内膜に局在するというパラダイムの転換> mtDNAにコードされている13種の構造遺伝子は、すべてが呼吸鎖酵素複合体のサブユニットをコードしている。それゆえ、それらはすべて翻訳語にミトコンドリア内膜上に配置されると考えられてきた。しかし、我々の先行研究から、一部のmtDNAコードタンパクが細胞膜表面に提示され、自己抗原として機能している可能性が示唆されている。この現象をより詳細に解析するため、異なるmtDNAを有する細胞同士で細胞膜表面に提示されている膜タンパクの網羅的解析を試みており、現在その手法等を含めて検討を実施している。
<ミトコンドリアDNA(mtDNA)の突然変異は、老化やがんの原因となるというパラダイムの転換> mtDNAの複製を行うDNAポリメラーゼ(Polγ)の校正機能を破壊したマウスを用い、mtDNAに蓄積したランダムな突然変異が老化の原因になるかどうかの検証を実施し、現在も実施している。昨年度は、骨密度に着目したところ、Polγ変異マウスは確かに老化現象と同様に骨密度の低下を示すものの、その特徴は老化でみられる表現型と明らかに異なっており、老化ではなくむしろミトコンドリアの機能異常によるミトコンドリア病に近似していることが分かった。すなわち、mtDNAへの突然変異の蓄積は老化と似た表現型を示すものの、それは厳密には老化ではなく、ミトコンドリア病の一部を再現しているにすぎないことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
mtDNAの突然変異が老化の原因となるパラダイムの転換については、昨年度を含めて複数の視点から検証を実施しており、当初計画していた通りの成果を挙げている。ミトコンドリアDNAのポリメラーゼ校正機能破壊マウスを用いた実験では、当初の計画になかった新しい視点も盛り込むことができた。 一方で、mtDNAコードのタンパク質がすべて内膜上で機能するというパラダイムの転換については、細胞膜表面タンパクの網羅的解析方法の確立に予想よりも時間を要ものの、昨年度の検討から、概ね解析の方向性が定まったため、今年度の研究は順調に進むものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
mtDNAの突然変異が老化やがんの原因となる、というパラダイム転換については、今後もこれまで通り計画された研究を遂行していく。 また、これまでに樹立された新規mtDNA突然変異導入マウスの病態解析も進めており、その表現型が老化やがんとかかわりがあるかどうかについて詳細に検討する予定である。 mtDNAコードのタンパク質がすべて内膜上に存在する、というパラダイム転換については、昨年度末に検討した細胞膜表面タンパクの網羅的解析手法の方法を応用して、実際の解析を進めていく。
上記の2つのパラダイム転換を両輪として検証をすることにより、mtDNAの突然変異が生体に及ぼす影響について、新しい知見やパラダイムの創出を目指す。
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