研究課題/領域番号 |
25250012
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
近藤 科江 東京工業大学, 生命理工学研究科, 教授 (40314182)
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研究分担者 |
近藤 玄 京都大学, 再生医科学研究所, 教授 (40243258)
水島 友子 公益財団法人実験動物中央研究所, 試験事業部, 研究員 (90311240)
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研究期間 (年度) |
2013-10-21 – 2016-03-31
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キーワード | 病態イメージング / トランスジェニックマウス / 生体発光イメージング / HIF / 発がん |
研究実績の概要 |
H26年度は、以下の3課題を実施した。 (1)病態イメージングTgマウスの改良:FVB/HOLトランスジェニック(Tg)マウスは、トランスジーンが第19番染色体にシングルコピー挿入されている。しかしFVBという一般的でない遺伝的背景にあるために汎用性が低い。そこでこの系統をC57BL/6(B6)系統に戻し交配し、コンジェニック系統を作出した。これまでに11回(N11)まで戻し交配が完了している。一方このTg系統では、コピー数が少ないためレポータータンパク質を効率よく検出するためにはホモ化する必要がある。そこでN9の段階でヘミTgマウス同士を交配し、その産仔の中から定量PCRによりホモTgマウスを選択し、ホモTg家系を作出した。発光イメージングにより、レポーター遺伝子の発現応答についての評価も行った。 (2)新規レポーターを用いたTgマウスの作出:前年度までに作成したレポーター遺伝子を持ったTgマウスの作成を行った。異なる3種のレポーター遺伝子を各々マイクロインジェクション法により受精卵に注入し作出した。合計14ライン(匹)のトランスジェニックマウスについてジャームラインへの伝搬を確認し、そのうち1ラインについて、新生児低酸素期におけるルシフェラーゼの発現を確認した。このラインのヘテロ個体同士を交配しホモ個体の作出・繁殖を開始した。 (3)がん病態イメージングに適したrasH2マウスの作出:作出したTgと掛け合わせF1で超早期発がん試験マウスの構築をめざすrasH2は、従来毛色が茶色でありin vivoイメージングには不向きであるため、チロシナーゼ遺伝子変異を導入しアルビノ化して白色rasH2-Tyr[X]を作出した。rasH2-Tyr[X]に化学発がん剤 MNNUを用いた発がん実験を実施したところ、発がん部位・短期性ともにrasH2とほぼ同等の発がん感受性を示すことが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度実施した(1)病態イメージングTgマウスの改良、(2)新規レポーターを用いたTgマウスの作出、(3)rasH2マウスのアルビノ化およびオリジナルrasH2との性能比較において、新規レポーターを用いたTgマウスの作出は、当初予定していたよりも難航し、作製したレポーター遺伝子のうち、1ラインしか得ることができなかったが、これを用いて研究計画を実施するために、数を増やし、秒たイメージングに使用可能かを評価することとした。一方で、改良していたTgを用いて、新たに炎症性疾患の病態イメージングマウスの構築を行うに十分な予備実験結果を得た。また、rasH2マウスのアルビノ化も完了し、発がん部位・短期性ともにrasH2とほぼ同等の発がん感受性を示すことが確認できた。これらの結果から、超短期発がん試験用のマウス構築は、計画を進めることができる状況にあり、更に炎症性疾患のモデルの構築も並行して行うことができることが示され、おおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
改変および新規に樹立したTgマウスを用いて、炎症性疾患及び発がんの病態イメージングを行い、既存のTgと疾患部位の検出感度の違いを評価する。 (1)炎症性疾患の病態イメージング:C57BL/6(B6)系統にMyelin basic protein(MBP)に由来するペプチドを投与すると効率よく自己免疫性脳炎(EAE)の発症を誘導できる事がわかったため、B6系統に戻し交配して作出したコンジェニック系統を用いて、MBPに由来するペプチドを投与し、経時的にイメージングすることで病態イメージングを試みる。イメージングの結果から、EAEの発症メカニズムにつながる情報の収集を行う。 (2)発がんの病態イメージング:B6系統に戻し交配して作出したコンジェニック系統を用いて、B6由来のがん細胞を移植し、発がん過程における宿主側のHIF活性を観察する。宿主側のHIF活性がどのような細胞に由来するのかを観察することで、発がんメカニズムに関する情報収集を行う。 (3)短期発がん試験モデルマウスを用いた病態イメージング:アルビノ化し、MNU(N-methyl-N-nitrosourea)を用いた発がん実験により、元のrasH2マウスと遜色ない発がん感受性を有することを確認したrasH2- Tyr[X]と、新たに樹立したTgマウスを交配し、F1を用いた短期発がん試験を行う。その結果を元のTgイメージングマウスでの結果と比較し、新たに樹立した病態イメージングマウスを評価する。
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