研究課題
『目的』人工制限酵素という最新技術を、申請者が得意とするウイルスベクターやES 細胞などと組み合わせ、任意の遺伝子改変を可能にするオンデマンドゲノム編集システムを開発する。さらに開発した遺伝子組換え技術・動物を用いて、社会問題にもなっている不妊・不育のメカニズム解明を目指す。なお開発した遺伝子組換え技術および動物は、公的機関を通して広く生命科学研究者に提供する。『実施概要』本研究では以下の2つを大きな柱にして研究を進めている。I.オンデマンドゲノム編集システムの開発:これまでにCas9とsgRNAを共発現するプラスミドを受精卵の前核に注入する手法を開発したが、点変異やノックインなどの複雑な遺伝子改変が難しいことから、次善策の検討を行った。これまでに、ES細胞を用いることで単純遺伝子破壊だけでなく、2本鎖DNAを鋳型として10遺伝子で点変異やタグ挿入を試みた。その結果、受精卵注入では得られないほどの低率のsgRNAを使った場合でも、ES細胞であれば容易に目的変異体を得られることを示した。また受精卵操作では、得られた産仔がモザイク状態になるため、遺伝子型解析や表現型解析が困難である点についても、クローン化できるES細胞の利点を活かせば解決できることを示した。II.生殖不全マウスの重点解析:区分Iで得られた遺伝子改変マウスについて、交配による妊孕性試験を行い樹立した雄性不妊系統について表現型解析およびメカニズム解析を進めた。H27年度は、精子カルシニューリン(PPP3CC/PPP3R2複合体)が、精子の中片部の屈曲性を制御していること、さらに阻害剤が男性避妊薬開発に繋がる可能性があることを示し、Science誌に発表した。
1: 当初の計画以上に進展している
CRISPR/Cas9システムとES細胞を組み合わせることで、効率的な遺伝子改変システムを構築できたことから、順調に進展していると判断した。さらに精子カルシニューリンが精子の成熟に必須であり、その阻害薬が男性避妊薬の開発に繋がることをScience誌に報告できたことなどを総合的に考慮し、当初の計画以上に進展していると判断した。
単純な遺伝子破壊と異なり、点変異やノックインなどの複雑な遺伝子改変を受精卵で行うことは難しい。複雑な遺伝子改変はES細胞で組み合わせることで、効率化を計る。またES細胞利点を活かし、従来のように遺伝子改変マウス系統を樹立して解析するのではなく、第一世代のキメラ動物を用いて機能解析する手法を確立する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 5件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 7件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件)
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