研究課題
昨年度に塩野義製薬と共同研究した抗Wnt5aモノクローナル抗体に関して、本年度はその抗腫瘍効果に関して検討を行った。私共の研究から、Wnt5a高発現子宮頸癌細胞株HeLaS3細胞ではWnt5aが転移・浸潤能に加えて細胞増殖を制御することが判明している。そこで、Wnt5aモノクローナル抗体をHeLaS3細胞に作用させ、上述の細胞現象に対するその中和活性を検討した。その結果、抗Wnt5aモノクローナル抗体はWnt5aによる転移・浸潤能は減弱させる一方、細胞増殖には中和活性を示さなかった。この原因を解析した結果、Wnt5aによる細胞増殖制御には受容体エンドサイトーシスを介さないことが判明し、その下流でSrc familyの活性化が関与することが明らかになった。したがって、昨年度の研究成果とあわせて、Wnt5a依存性の受容体エンドサイトーシスを介する経路が癌細胞の細胞運動を、介さない経路が細胞増殖を制御することが判明した。また、Wnt5aシグナルと種々の炎症病態との関連が示唆されているが、私共は薬剤誘発性腸管炎症モデルにWnt5aとその受容体Ror2の様々なコンディショナルノックアウトマウスを導入し、腸管炎症におけるWnt5aシグナルの機能を個体レベルで解析した。その結果、炎症時に線維芽細胞から分泌されたWnt5aが樹状細胞に作用することでIFN-γシグナルの応答性が増強し、樹状細胞のIL-12産生が促進することが判明した。IL-12はTh1細胞への分化を誘導し炎症応答を促進することから、Wnt5a-Ror2シグナルが腸管炎症病態の増悪化に関与することが明らかになった。本研究課題によって、Wnt5aによる細胞極性と癌細胞増殖の新規制御機構が明らかとなり、さらに個体レベルでのWnt5aによる炎症応答制御機構が明らかになった。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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