研究課題/領域番号 |
25250019
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
稲澤 譲治 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (30193551)
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研究分担者 |
小崎 健一 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (50270715)
井上 純 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (50568326)
谷本 幸介 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (60611613)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 難治がん / 癌遺伝子 / 癌抑制遺伝子 / ゲノム / エピゲノム / マイクロRNA / DNAメチル化 / 分子標的薬 |
研究概要 |
次世代型高速シーケンサーの開発ならびに大量ヒトゲノム情報を利用可能とするインフラが整備され、機能性RNAを含む種々の網羅的分子情報の収集と多次元的解析が加速化され、大量オミックス情報を基盤としたがん個別化医療の実現に大きな期待が寄せられている。今回の研究は、がんの統合的ゲノム・エピゲノム解析とその成果に基づきがん病態を包括的に理解することで、各種がんの主要シグナル伝達経路を明らかにし、がん個別化治療や予防法確立の分子基盤を構築し、画期的ながん分子診断法の開発ならびに治療標的分子の同定を目的とする。今年度は、主に食道扁平上皮がん(ESCC)、口腔扁平上皮がん(OSCC)などの癌種を解析の対象にした。ESCCのがん部・非がん部のペア検体の累計約130症例の検体を収集した。特に食道内多発進行癌症例や、進行癌と表在癌の合併症例、胃癌との重複癌症例の検体も採取できており、これらのがん関連遺伝子エキソーム解析を行い、腫瘍発生の系譜解析やheterogeneityを検討した。また、ESCC約70症例において網羅的DNAメチル化解析を行い、加えて独自の解析アルゴリズムを確立することで、リンパ節転移(UICC TNM分類第7版におけるN0 vs N3)と有意な相関を示すDNAメチル化異常領域の複数が抽出された。別ESCCサンプル集団におけるvalidation解析を進めており、ESCCリンパ節転移予測バイオマーカーとしての有用性の検証解析を進めている。さらに、網羅的マイクロRNAスクリーニング法により酸化ストレス応答転写因子NRF2の転写活性を直接的に負に制御する強力ながん抑制性miRNAとしてmiR-634を同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
外科切除腫瘍サンプルを包括同意の下に効率よく収集できるバイオバンク事業体制が整備できた。これにより切除検体の品質管理が担保され全ゲノムシークエンス解析に耐えうる高品質バイオリソース収集システムが整備された。NRF2結合配列ARE (Antioxidative Response Element)挿入ルシフェラーゼ・レポータープラスミドによるNRF2活性負制御のマイクロRNAスクリーニングシステムを構築し、 p62/KEAP1/NRF2パスウェイを抑制制御するマイクロRNAの網羅的スクリーニング系を確立し、これにより酸化ストレス応答転写因子NRF2の転写活性を直接的に負に制御する強力ながん抑制性miRNAのmiR-634を同定し、その分子機構の解明も進みつつある。
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今後の研究の推進方策 |
今回の研究の過程で整備できた包括同意に基づくバイオリソース収集保存管理システムのもとで収集された生体試料を利用して得られたゲノム・エピゲノムハイスループット解析情報に、遺伝子発現解析、エピジェネティック発現調節異常の同定、蛋白発現・機能変化、さらにがん特異的クロマチン構造異常やマイクロRNA機能異常の探索などを合わせて得た「がんの統合的ゲノム・エピゲノム解析とその成果」に基づき、がん病態を包括的に理解して各種がんの主要シグナル伝達経路や細胞文脈を明らかにする。これにより、がん個別化治療や予防法確立の分子基盤を構築し、画期的ながん分子診断法の開発ならびに治療標的分子の候補を探索する。
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