20-30塩基長の小分子RNAによる遺伝子発現抑制機構をRNAサイレンシングと呼ぶ。正しい遺伝情報を次世代へと受継ぐ使命を担う生殖細胞では、PIWI-interacting RNA(piRNA)がDNA損傷を引き起こす転移性因子トランスポゾンからRNAサイレンシング機構を介して生殖細胞のゲノムをまもると同時に、生殖組織の分化を正常に導く。しかし、その動作原理は未だ不明である。piRNAによるトランスポゾンのサイレンシング機構はpiRNA生合成機構とpiRNAによるトランスポゾン発現抑制機構の二つに分けられるが、本研究では、特にpiRNA生合成機構に焦点を絞り、その仕組みを包括的に理解することを目指す。これまでのpiRNA研究を通して培った研究基盤や成果を活かしつつ本研究を進展させる。本年度は、特に人工的piRNA系を確立することを目的として研究をすすめた。我々はこれまでにtraffic jam mRNA 3’UTRを由来とするジェニックpiRNAの発現に必須なシス配列(100塩基長)を決定したが、この配列に相同性が高い配列を、ジェニックpiRNAを発現する他のmRNAに見出す事はできなかった。つまり、ジェニックpiRNAの生合成機構は、核酸の一次配列ではなく、他の要因をもとに、前駆体を選別している可能性が見出された。そこで、その様な要因を探りあてるため、ジェニックpiRNAを発現する他のmRNAにおいてシス配列として機能する断片を決定することにした。現在、コンストラクトを作成中である。コンストラクトの作成後は、OSCにそれらを発現させることによって、またnorthern解析をすすめることによって、ジェニックpiRNA産生に必要な部分配列を同定する。traffic jam mRNA 3’UTRを由来とするジェニックpiRNAの発現に必須なシス配列との相同性を探る。
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