研究課題/領域番号 |
25251004
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大野 睦人 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 教授 (80201979)
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研究期間 (年度) |
2013-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | RNAポリメラーゼⅡ / RNA核外輸送 / mRNA / U snRNA / hnRNP |
研究実績の概要 |
1.hnRNP Cの4量体が200-300塩基長を認識する様式を構造生物学的手法で明らかにする。hnRNP CのどのドメインがRNAの長さを認識しているのかの情報がタンパク質の結晶化を高効率化するためには重要である。H28年度には、多量体形成ドメインであるロイシンジッパーとRNA結合ドメインである塩基性ドメインがRNAの長さを認識し、U snRNA輸送因子であるPHAXをRNAから解離させるために最も重要であることが示唆された。一方、よく知られているRNA結合ドメインであるRBDは必須ではないものの上記活性に弱く貢献することが示唆された。また、予備的な結果ではあるが、ロイシンジッパードメインがないと長いRNAは認識できるがPHAXを解離できないことが示唆された。
2.4量体の核内での解離・置換のダイナミックなメカニズムを明らかにする。HeLa細胞核抽出液中に、4量体をRNAから解離させるATP加水分解依存的な活性が存在することが分かっている。責任因子の生化学的精製・同定のためには試験管内の系を高効率化することが必須である。H28年度には様々な系を試したが、十分な高効率化を実現するには至っていない。
3.4量体をノックダウンした細胞中では、U snRNA輸送因子が結合してしまったような異常mRNAの核外輸送が停止されることが分かっている。このようなmRNA複合体の異常を感知して発現を止める新規核内mRNA監視機構を明らかにする。H28年度はhnRNP Cの活性と拮抗するPHAXのKDの表現型を中心に解析した。予備的な結果によると、U snRNAの核外輸送因子というかなり特殊な機能を持つと思われていたPHAXの発現低下が、グローバルな転写の低下やゲノムの不安定化を引き起こすことが示唆され、PHAX側からのアプローチの重要性が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2番のアプローチがもたついているものの、1番と3番についてはかなり進展した。全体としては期待通り進展したと考える。
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今後の研究の推進方策 |
1については、hnRNP Cのドメイン構造をまず明らかにし、その後、RNAの長さを認識する必要最小限のドメインを大腸菌で大量発現させ、それを結晶化する方針で行く。
2については、試験管内の系の高効率化を継続して試みる。
3については、hnRNP Cの活性と拮抗するPHAXのKDによりゲノムが不安定化することが示唆された。今年度は、引き続きこの方向を追及し、RNA輸送因子とグローバルなゲノムの安定性との関連性を明らかにすることを試みる。
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