研究課題/領域番号 |
25251009
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中川 敦史 大阪大学, たんぱく質研究所, 教授 (20188890)
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研究分担者 |
宮崎 直幸 生理学研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 研究員 (00634677)
一木 珠樹 独立行政法人農業生物資源研究所, その他部局等, 研究員 (70355501)
岩崎 憲治 大阪大学, たんぱく質研究所, 准教授 (20342751)
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研究期間 (年度) |
2013-05-31 – 2016-03-31
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キーワード | ウイルスの細胞内動態 / 分子認識および相互作用 / X線結晶構造解析 / 放射光 / クライオ電子顕微鏡 / 電子顕微鏡トモグラフィー |
研究実績の概要 |
1.ウイルス粒子の構造解析 高圧凍結したRDV粒子の結晶から,2.5A分解能を超える高分解能の回折点を観測する事に成功した.高圧凍結の適用により1つの結晶から3.4A分解能のフルデータ収集に成功した.このデータを用いた構造精密化を進めている.また,X線自由電子レーザー施設LCLSにおいてコヒーレント回折イメージング実験を行い,RDV単粒子からのスペックルの観測に成功した. 2.ウイルス蛋白質の大量調製及び構造解析 RDVのバイロプラズマ主構成蛋白質Pns12の結晶構造を2.1A分解能で決定する事に成功した.これまで知られている他のレオウイルス属由来のバイロプラズマとは異なる新規なオリゴマー構造であることが明らかとなった.RDVのRNAキャッピング酵素P5の大量調製・結晶化に成功し,分解能2.1Aの回折強度データを得る事に成功した.新規構造であるため,位相決定を目指した重原子置換体の作製と回折実験を試みている.RDVの内殻中で核酸を保持する機能を有すると推定されている核酸結合蛋白質P7の大量調製と高純度化に成功した.結晶化スクリーニングの結果,X線回折を得るには不十分であるが結晶様の沈殿が得られており,引き続き結晶化条件の最適化を行っている. 3.ウイルスの細胞内動態の解析 クライオ電子線トモグラフィーによりウイルスを感染させた昆虫培養細胞の観察を行い,ウイルス感染後期において,ウイルスが細胞からエキソサイトーシスにより放出される様子を詳しく観察することに成功した.その成果を現在論文としてまとめている.また,宿主内でどのようにウイルスが増殖・伝搬しているのか調べるために,Serial block-face SEM用の試料を作製した.今後,それらの試料を使ってデータ取得ならびに解析を進めていく.クライオ電子顕微鏡トモグラフィーによりウイルスを感染させた細胞の観察を行い,昆虫細胞および植物細胞内での局在および感染過程の観察に成功し,論文に報告した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
クライオ電子顕微鏡トモグラフィーによる感染細胞観察が順調に進展し,論文としてまとめることができる結果を得ることができた.現在論文作成中である.RDV由来の蛋白質について,Pns12の2.1A分解能の構造解析に成功し,現在論文にまとめるための生化学データの収集を進めている.また,P5の2.1A分解能の回折データを収集することができ,現在位相決定を進めている. P7については,高純度の試料を大量に得るプロトコルを確立し,結晶化スクリーニングを進めている.P2を欠損したウイルス粒子については,1つの結晶から3.4A以上の分解能のフルデータセットの収集に成功した.さらに高圧凍結により.2.5Aを超える回折像は得られており,平成27年度中にフルデータセットの取得と構造解析を目指す. 以上の理由により,「おおむね順調に進展している」とした.
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今後の研究の推進方策 |
Pns12,P5のX線結晶構造解析を論文としてまとめるとともに,P7など他のウイルス蛋白質の構造解析を進める.電子顕微鏡に関しては,時間軸を加えた解析を積極的に進める.P2を保持したウイルス粒子についてはクライオ電子顕微鏡を用いた解析とともに,P2単体のX線構造解析を進め,その結果と合わせることで.全体像の解明を目ざす.P2を欠損したウイルス粒子については,2.5A以上の高分解能構造解析を進める. 最終年度にあたって,これまで成果をまとめ,原子構造に基づくウイルスのライフサイクルの解明を目指す.
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